セミプロに当たるレギオナルリーガ(4部)の南西地区において、出場停止処分にまつわる、なんとも奇妙で不幸な出来事が起きている。

 18日に行われたエルバースベルク対ホンブルクの後半19分、ホンブルクに所属するクリスティアン・レンシュが自陣ゴールのライン上でシュートをブロックするも、マリオ・シュミット主審はこれをハンドと見なし、レッドカードを提示。同選手の猛抗議もむなしく、退場と次節の出場停止が決まってしまった。

 しかしレンシュにとって幸いだったのは、地元TV局がこの試合を中継していたこと。映像をチェックすると、ボールが当たったのは、手ではなく明らかに胸であり、ホンブルク側はこれを武器に、レギオナルリーガ南西地区を管轄するスポーツ裁判所に異議申し立てを行った。すると、ほどなくして同裁判所からは、このような異例のコメントが発表されている。

 「2件の死亡事件があったため、当該選手の出場停止処分を執行するかどうかの口頭弁論を、24時間以内に行うことができない。したがって、異議申し立てを認める」

 つまり、この試合でジャッジを担当した主審および副審のうちの2人が、試合後数日間で突然命を落としたため、裁判そのものを行うことが不可能になってしまったという。これによりレンシュは26日に行われる、自身の古巣カイザースラウテルン2軍とのリーグ戦に出場可能となった。

 大衆紙「ビルト」の取材に対し同選手は「もちろん処分が取り消されることを期待していたけれど、この状況にはショックを受けている」とコメントしており、彼が所属するホンブルクのラファエル・カウォリク社長も「このようなことになってしまったら、スポーツなど二の次。亡くなってしまった方の家族や友人に、クラブを代表してお悔やみを申し上げたい」と話している。

 なお、ビルト紙をはじめその他メディアもこの事件を伝えているが、審判団のうち2人がどのような原因で亡くなったかについては記されていない。