男子200メートルのサニブラウン・ハキーム(16=東京・城西高2年)が、ビッグサプライズを起こした。16歳172日で同種目世界最年少出場した予選4組。同100メートル銀メダルのジャスティン・ガトリン(33=米国)と同組で走って20秒35(無風)で2着に入り、今日26日の準決勝に進出。藤光謙司(29=ゼンリン)高瀬慧(26=富士通)も通過し、日本勢3人が準決勝に進むのは、史上初となった。

 前だけ見て、全力で飛ばした。サニブラウンは、9レーンからゴールを目指した。誰も見えない大外は人生初。3レーンのガトリンも「一緒に走ったという気がしない」。コーナーを終えて2番手。最後はあごが上がって、歩幅が大きくなった。フィニッシュ直前に左を見て2着を確認。「正直びっくりした。(順位は)全然分かんなかった。通ってひとまず安心した」。

 ビッグサプライズだ。同種目世界最年少出場の少年が自己記録19秒85を持つアシュミード(ジャマイカ)を食った。しかも自己記録まで0秒01に迫る20秒35とベストの走りだ。母明子さんは「物おじせずに自分のレースができたことに感激です。どんどん世界を吸収していってほしいです」。

 取材エリアでは来年リオデジャネイロ五輪があるブラジルのエレナ・レベロ記者(26)に質問された。英語で「いつも夢見ていた世界選手権でレースをとても楽しめた」と返答。同記者は「とても興味がある選手だ」とリオの注目株として食いついた。

 23日には藤光と「鳥の巣」で100メートル決勝を観戦。ボルトとガトリンの死闘を目に焼きつけた。一夜明けると同組にガトリン。「ちょっとびっくりして『あーーー』となった」。そんな相手が目に入らないほど自分のレーンに集中した。

 ガーナ人の父と短距離で高校総体に出場した明子さんを母に持つ。サッカー少年でFWだったが、小3の時に母の勧めで陸上を始めた。中高一貫教育の城西中に一般入試で入った。山村監督は「細い子がいるという印象だった。6年後の高校3年になった時、インターハイでどれぐらい活躍できるか、を考えて計画を立てた」。そんな予想をはるかに超えて世界舞台で結果を出した。

 北京ではベテラン藤光と同部屋。十分な睡眠が必要なタイプで練習休日には午前9時半まで寝た。藤光に「ちょっと僕、眠いんで寝ます。(朝は)僕寝てると思うので、起こさなくていいです」。そんなあっけらかんとした性格に、藤光は「なかなか肝が据わっている。ユース王者ですからね」とにっこり。この日もレース前の緊張を問われて「別に」とさらりと答えた。

 今日26日の準決勝は再びガトリンと同組だが「タイムはまだ上げられる」。将来の目標はボルトが持つ同100メートルの世界記録9秒58の更新。「やっぱり目的は大きいほうがいいんで」。驚異の16歳が「鳥の巣」でセミファイナルに挑む。【益田一弘】

 ◆世界選手権男子200メートルの最年少メモ 93年シュツットガルト大会にリッキー・カノン(ナウル)が17歳33日で出場。これが最年少記録だったが、サニブラウンが更新した。最年少の決勝進出者は、05年ヘルシンキ大会のウサイン・ボルト(ジャマイカ)で18歳355日。