複数選考が一番いい。強い選手を選ぶこと、公平に選ぶこと。この2つは完全にイコールにはならない。一発選考は公平の面で一番だが、戦えないメンバーになる可能性がある。短距離なら五輪での実力も推測できるが、マラソンは別物。少し風邪をひいた、まめがつぶれたで走れなくなる。本当に走れるメンバーが全部つぶれるリスクがある。2月の東京マラソンが一発選考だったら誰を選ぶんですか? 現場も分かっていると思う。選考が多少ややこしくなっても強い選手を選ぶ。その中で公平さを追求することが一番と思う。

 マラソンが栄えてきた体系もある。いかに放送の帯がとれるか、いかに新聞に露出できるか。それでマラソンはすごいと人気が出て、市民マラソンが日本で定着した。反発されるかもしれないが「露出が少ない」と企業がチームをやめれば、雇われる選手と指導者の数が激減する可能性もある。陸上の普及、育成の面で複数にメリットがある。

 「選考会3本分のお金をビッグレース1本が払えば」という意見も聞くが、マラソンでもらうお金はマラソンで使うぐらいの額で、それ以外の種目には波及していない。それを取り違えて、陸連はお金のために複数選考をやっていると言われるのは大きな間違い。

 選考で「主観」と言われることがある。ずっと見ているコーチが「この選手は暑さに強い」というと結構当たる。それは経験値。だが裏付ける客観的なデータがなければ、主観、えこひいきととらえられる。だから我々はその根拠を強化委員会、科学委員会に求めている。ただ今回は代表枠3、選考会4というのが話をややこしくした。枠から選考会の数を考えるという逆の発想はあるでしょう。