陸上のダイヤモンドリーグ第3戦のモハメッド6世記念が22日、モロッコのラバトで開催される。発足7年目を迎えるダイヤモンドリーグだが、アフリカで開催されるのは初めてのこと。アフリカ勢にとっては歴史に残る大会となる。今大会では男子400メートルのアイザック・マクワラ(29=ボツワナ)と、女子800メートルのカスター・セメンヤ(25=南アフリカ)に注目したい。

 マクワラは400メートルのアフリカ記録保持者。ダイヤモンドリーグでも中・長距離ではアフリカ勢が席巻しているが、短距離やフィールド種目で優勝する選手は少ない。

 マクワラは2014年7月に44秒01のアフリカ記録と、200メートルの19秒96を同じ日にマークして注目された。そして昨年43秒72と自身のアフリカ記録を更新。五輪&世界陸上でも優勝争いができる選手にグレードアップした。

 だが、昨年の北京世界陸上は5位。ダイヤモンドリーグでも2位と3位はあるが優勝はない。今大会にも13年モスクワ世界陸上金メダルのラショーン・メリット(29=米国)という強敵が出場するが、アフリカ初開催の今大会で優勝し、リオ五輪に弾みをつけたい。

 セメンヤは2009年ベルリン世界陸上金メダリストだが、男性的な体つきなどで性別疑惑が指摘されたこともある。11年テグ世界陸上と12年ロンドン五輪は銀メダル。10年以降はベルリンで見せた圧倒的な走りが影をひそめていたが、今季はその強さが復活してきている。

 4月の南アフリカ選手権で同じ日に、400メートル、800メートル、1500メートルに優勝する離れ業を演じ、ダイヤモンドリーグ第1戦ドーハ大会(5月6日)でも1分58秒26の今季世界最高で2位に0・88秒もの差をつけた。

 昨年の北京世界陸上のマリナ・アルザマソワ(28=ベラルーシ)、13年モスクワ世界陸上のユニス・スム(27=ケニア)と、歴代の金メダリストも出場するが、セメンヤが09年の強さを取り戻せば、アフリカ開催ダイヤモンドリーグで名を残すことができる。

 その他では、男子円盤投げにピョートル・マワホフスキ(32=ポーランド)ら、北京世界陸上メダリスト3人がエントリー。そこに37歳の北京五輪金メダリストのゲルト・カンター(37=エストニア)も加わり、リオ五輪前哨戦ともいえる戦いが展開される。

 また、男子走り高跳びのジャンマルコ・タンベリ(23=イタリア)は、3月の世界室内に優勝した選手。1980年モスクワ五輪に出場した父親がコーチの二世選手で、13年モスクワ世界陸上金メダルのボーダン・ボンダレンコ(26=ウクライナ)との対決が注目されている。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル~8位1000ドル)。各種目は年間7大会で実施され、各大会のポイント(1位10点~6位1点)合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、オリンピックや世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目などは、オリンピックや世界陸上よりも激しい戦いになる。