陸上のダイヤモンドリーグ第7戦のビスレットゲームズが9日、ノルウェー・オスロのビスレットスタジアムで行われる。女子3000メートル障害には、先月28日のユージーン大会で世界歴代2位をマークしたルス・チェベト(19=バーレーン)が出場する。男子棒高跳びでは世界記録保持者のルノー・ラビレニ(29=フランス)と昨年の北京世界陸上金メダルのショーン・バーバー(22=カナダ)の2強が対決。日本からは男子やり投げに新井涼平(24)が参戦する。

 チェベトがユージーンで出した8分59秒97は史上2人目の8分台で、世界記録に1秒16差と迫った。ケニアからバーレーンに国籍変更し、室内3000メートルやクロスカントリーでも活躍する走力が武器の選手だ。

 ユージーンでは中盤からチェベトが独走したが、終盤でペースダウンしたところをハイビン・ジェプケモイ(24=ケニア)が0・04秒差まで追い込んだ。昨年の世界陸上金メダリストで、チェベトよりはハードリングも上手い。

 女子3000メートル障害は05年から五輪&世界陸上で実施され始めた歴史の浅い種目。08年に初めて8分台が出たときも、すぐに多くの選手が続くと思われたが、ユージーンのチェベトまで誰も8分台で走れなかった。会場のビスレットスタジアムは中・長距離で数々の世界記録が誕生してきたトラック。8年ぶりの世界記録更新も期待できる。

 ラビレニとバーバーは、対照的なタイプの選手の戦いという点で注目されている。6メートル16の世界記録を持つラビレニは177センチと棒高跳び選手としては小柄だが、助走スピードの速さと、曲げたポールの反発に乗る技術の巧みさで6メートルを何度もクリアしてきた。

 対するバーバーは190センチの長身で、世界一長いと言われる5メートル38センチのポールを使いこなすパワーが武器(ラビレニは5メートル20センチ)。今年1月の室内競技会で、史上2番目の若さで6メートルに成功し、5月のゴールデングランプリ川崎でも豪快な跳躍を見せて優勝した。

 2人の対決は今季に入ってからはラビレニが7連勝しているが、前戦のユージーンでは5メートル81の同記録での1、2位だった。2カ月後に南半球リオで雌雄を決する2人が、北欧で前哨戦に臨む。

 新井にとってはリターンマッチの意味合いが強い試合になる。昨年の世界陸上では決勝には進んだが、前半の3回の投てきでベストエイト(入賞)に6センチ差で残ることができなかった。83メートル07は記録的には大健闘といえたが、9位という悔しい順位を取ってしまった。

 「わずか6センチでしたが、すべてが劣っていたと思えるくらいに悔しかった。筋力アップはもちろん、技術的には基礎の基礎からやって、高いレベルの投てきのときもぶれないように冬期はやってきました」

 金メダルのジュリアス・イエゴ(27=ケニア)、銀メダルのイハブ・アブデルラーマン(27=エジプト)ら、世界陸上入賞者が5人エントリーしてきた。3位以内に入れば、北京の雪辱と同時にリオへの大きなステップとなる。

 ウサイン・ボルト(29=ジャマイカ)、ジャスティン・ガトリン(34=米国)の2強が出場しない男子100メートルは、その分いつもとは違う視点で見ることができる。

 昨年の世界陸上で2強に続いて銅メダルのアンドレ・ド・グラッセ(21=カナダ)、代表経験こそないが今季9秒94の自己新を出しているアミーア・ウェッブ(25=米国)、9秒92の白人世界最高を持つクリストフ・ルメートル(25=フランス)、そして40歳代世界最高の9秒93を6月2日に出したばかりのキム・コリンズ(40=トリニダードトバゴ)といった特徴ある選手たちが出場する。

 グラッセとウェッブは身長こそ170センチ台後半だが、将来性を高く評価されているだけに注目したい。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル~8位1000ドル)。各種目は年間7大会で実施され、各大会のポイント(1位10点~6位1点)合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、オリンピックや世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目などは、オリンピックや世界陸上よりも激しい戦いになる。