強い。強すぎる。ラグビーの大学選手権で、帝京大が自らの記録を塗り替える6連覇を達成した。初優勝を狙った筑波大との決勝戦のスコアは50-7。同大会の決勝史上最多得点、最多得失点差、力の差が分かりすぎる圧勝だった。関東大学対抗戦を圧倒的な力の差で全勝優勝。伝統校と呼ばれる早大、慶大、明大との試合もワンサイドで、ライバルはいなかった。

 大学の中堅チームから常勝軍団にまで育て上げた岩出雅之監督の手腕は、相当なものだ。特に素晴らしいのはチームのマネジメント力。練習グラウンドやトレーニングルームの整備はもちろん、管理栄養士やトレーナー、医療スタッフなど人的な環境も整えた。

 選手たちは月に1回血液検査を受ける。体調のチェックとともに不足する栄養素なども調べる。負傷の治療やリハビリも、専門のスタッフが見る。スポーツの現場と医療のコラボは強化のために重要。医学部のある4大学が今大会のベスト4に入ったのも、単なる偶然ではないように思う。

 「伝統校」といわれる早大や明大、慶大の巻き返しはあるのか。帝京大の牙城を崩せるのか。残念ながらいずれもノーだろう。岩出監督は高校日本代表監督などを歴任し、96年に就任した。今年が20年目。長期的に強化できるのが、最大の強みだ。岩出監督が好んで「積み上げる」という言葉を使うのも、1年1年地道にやってきた自負からだ。

 ところが、伝統校の監督は基本的に短期。数年で結果を出す必要がある。もちろん、過去には素晴らしい結果を残した指導者もいるが、帝京大と岩出監督のように腰を据えて力を入れられるとかなわない。さらに「OB」という縛りもある。日体大出身の岩出監督が早大を指導することは「伝統」に反するのだ。

 早大や慶大など歴史のある大学に代わり、新興校が頂点に立つ。ラグビーに限ったことではない。新興の大学がスポーツの強化に取り組み、豊富な資金と優秀な指導者で台頭する。それが今の大学スポーツの姿。ラグビーは対抗戦という不思議なルールで「伝統校」を守ってきたが、その崩壊も時間の問題だろう。

 2次リーグでは東海大が早大を破った。リーグ戦を制した流通経大も一気に強豪校となる可能性がある。いずれも監督が長いスパンで選手を指導し、環境を整えてきたチーム。そういうチームが出てくるのは、自然の流れだろう。いつまでも「伝統校」が上位にいることの方が不自然だ。

 帝京大は今季、対抗戦7試合で失トライわずか4だった。最も接戦だったのが筑波大戦で31-10。早大、慶大、明大の「伝統校」には合計21トライを奪って1トライに抑えた。他の3試合も大差だった。唯一、帝京大に「弱点」があるとすれば、対抗するチームがないことだ。これでは、実戦での強化が限られる。

 「伝統」を捨てて、関東大学ラグビーの改革に踏み切ってはどうか。対抗戦を撤廃し、リーグを一本化。レベルの高い試合を数多くこなすことが、全体の底上げにつながる。帝京大が東海大や流通経大と対戦すれば、両者にとってメリットがあるはず。リーグ戦が強化の場になる。

 伝統校が2部落ちする可能性もある。早明戦をシーズンの最後にする「慣習」もいらない。それが自然な進化の形だ。ラグビーだけが特別というのは、不自然に見えて仕方がない。