世界6位の錦織圭(26=日清食品)の左脇腹が、ついに悲鳴を上げた。4大大会では14年全米決勝以来の対戦となった同13位のチリッチ(クロアチア)との4回戦は、1-6、1-5となったところで途中棄権。大会の日本男子シングルスとしては、95年の松岡修造以来、戦後2人目の8強入りはならなかった。
痛みで球を追う気力もわいてこない。何度も関係者席からチャンとボティーニの両コーチが、両手でバツを送り、止めろの合図を送った。それでも錦織は制止を振り切り、ゲームを続けた。「筋肉が切れるぐらいまではやろうと思った」。強い言葉だった。痛みと格闘した4試合だった。
最初のゲームでチリッチに4本のサービスエースをたたき込まれた。リターンが得意な錦織だが、全く拾う意思を見せなかった。続く自分のサーブは、第1サーブの平均が時速154キロと、通常より30キロ以上遅かった。2番コートの観客が異変にざわめいた。
第2セット1-4で初めてトレーナーを呼んだ。薬をもらい、また1ゲームを続けた。だが、少しずつネットに歩みよる足取りが棄権の合図だった。首を横に振り、ネット上でチリッチと握手。棄権が決まった。
朝の練習から棄権の兆候はあった。たった15分で終了。今大会の練習でもっとも短かった。練習後には両コーチと話し合う姿が見えた。「昨日から痛みがあった。前の試合と比べものにならないほど痛かった」。それでもコートに立った。
勝てるわけがない。それは分かっていた。しかし、「人生の中で一番、痛みと戦ったぐらい出し尽くした」。常にケガや痛みに弱いと言われ続けた。その自分を克服したいという思いもあったのだろう。だから無駄だと分かっていても、13ゲームも続けた。
大会後は日本に帰国する。「テニスでもできないので、しっかりと治療に専念したい」。昨年も左ふくらはぎ痛で2回戦を前に棄権した。今年もこれまでなら「1回戦もやらなかった」。痛みと闘う4試合は、錦織の心身の成長を物語っていた。
次戦は25日に開幕するマスターズのロジャースカップ(トロント)だ。そして、8月6日にはリオデジャネイロ五輪テニス競技が幕を開ける。【吉松忠弘】
◆錦織の左脇腹痛 初めてウィンブルドンの本戦に出場した08年、1回戦でジケル(フランス)と対戦したが、セットを分け合い、第3セットに入った時に左脇腹痛で棄権した。錦織のウィンブルドンの人生は、左脇腹痛で幕を開けていた。13年2月のデルレービーチ国際1回戦でも、カロビッチ(クロアチア)との1回戦第1セットの途中、同じ部位のケガで棄権した。
◆WOWOW放送予定 5日午後8時55分~、6日午前1時~、WOWOWライブ。男女シングルス準々決勝ほか。生中継。放送時間変更の場合あり。


