東京都の小池百合子都知事と国際ボート連盟のロラン会長が3日、都庁で会談した。20年東京五輪・パラリンピック大会の競技施設をめぐり、小池氏肝いりの「都政改革本部」が、ボート会場の建設中止を含めた見直しを提案。ロラン氏は小池氏に再考を迫り、事前の相談がなかったことも「若干落胆した」と、不快感も示した。小池氏は、宮城県の長沼ボート場の名前を挙げつつ、提案を精査すると表明。議論は平行線で、今後、混乱も予想される。

 小池氏とロラン会長の会談は、名刺や手みやげの交換も行う和やかな雰囲気。しかし双方の発言は、せめぎ合いそのものだった。

 ロラン氏は、建設中止を含めた見直し対象に挙がったボート・カヌーのスプリント会場「海の森水上競技場」について「(都から)事前に情報が提供されず、最初は驚いた。若干落胆した」と、不快感を表明。同競技場に決めた経緯を「日本全国を調査し、到達した結論」とした上で、都に対し「すべての情報を検証した上で結論を出したのか、不安だ」と疑問を示した。コストや選手のことも考えたと述べ、「我々がなぜこの結論に至ったか、都が分析できる情報をすべて提供する。我々を頼りにしてほしい」と、呼び掛けた。

 これに対し、小池氏は、「都政改革」を掲げて知事に就任した経緯を紹介し、五輪の経費や環境整備を見直す必要性に触れた。「都民、国民に納得してもらえるよう、調査を続けたい」と、立ち止まらずに検証を続ける意向を表明。報道機関の調査で、大会費用見直しの姿勢に関し「8割が賛成してくれている」と主張。今後、選手や競技団体の声を聞く意向も示した。

 小池氏は、都政改革本部が示した代替候補地の1つ、宮城県の長沼ボート場を挙げ、復興五輪の必要性にも理解を求めたが、ロラン氏は会談後、「長沼がオプションの1つなら懸念する。東京から遠く、アスリートのベストな経験にならない。レガシーとしての評価も若干低い」と否定的。議論は、平行線で終わった。

 都政改革本部は、「海の森-」が、大会後に見込む年間35万人の利用目標が非現実的などの理由で、建設中止を含めた見直しを提案。この日の「直接対決」では、競技団体との溝が埋まるかどうか、不透明なままだった。【中山知子】