国際柔道連盟(IJF)は9日、20年東京五輪に向けた新ルールを発表した。技の判定の「有効」を廃止して「一本」と「技あり」のみに変更。男子の試合時間も5分から4分に短縮して女子と統一することなどが含まれた。来年2月から試験導入され、東京五輪まで適用される見込み。男女の混合団体戦も設け、新種目として国際オリンピック委員会(IOC)に提案する。

 IJFが東京五輪に向けたルール改正を発表した。現在、3段階で区別する技のポイントのうち「有効」を廃止して、「技あり」と「一本」に限定した。従来の有効のポイントも技ありに集約するため、技ありは何度重ねても一本にならず、技あり2回での「合わせ技一本」は消滅する。抑え込みでの技ありも15秒から10秒に短縮した。

 男子の試合時間も5分から女子と同じ4分に短縮。指導差だけで4分が終了すれば、時間無制限の延長戦に入る。IJFは、ルール改正は攻撃を促進して一本勝ちを高めると説明。08年北京五輪は、レスリングまがいの脚取り技が見られるなど“タックル柔道”と言われ、IJFは10年1月に試合審判規定を改定した。人気低迷が続く柔道が五輪競技として生き残るための策でもあった。一本の「分かりやすい柔道」を追求し、短時間にすることでテレビ放送権収入を増やすメリットも背景にはある。

 リオ五輪で審判員を務めた大迫明伸審判副委員長は「有効や指導を細かく重ねて決着する試合は消える。柔道がダイナミックになる」と分析。全柔連関係者は、大技を積極的に仕掛けるリオ五輪男子73キロ級金メダルの大野将平が「新ルールに最適」と評した。大野は「技でポイントを奪う柔道をずっとやってきたので、変更は全く問題ない」と意に介さない。リオ五輪100キロ超級銀メダルの原沢久喜も「(廃止される)有効の技を技ありとして取ってくれるのは気になるが、見る側には分かりやすくていい」と否定はしなかった。

 新ルール案は来年2月のグランドスラム・パリ大会から試験運用され、8~9月の世界選手権(ブダペスト)後に検証される予定。「技あり」がどの程度まで判定されるかなど不透明な部分もあるが、日本柔道の戦術が大きく変わりそうだ。

 リオ五輪男子90キロ級金メダルのベイカー茉秋のコメント これによってどうするかはまだ、これから探していかないとと思ってます。有効ポイントがなくなったのは、改革だなぁと感じますね。寂しいような複雑な気持ち。いろいろ変わったが、新しいルールでも僕は1番になる。新しいルールに臨機応変にやっていく。

 ◆柔道近年の主なルール変更 03年から「指導」「注意」「警告」の順で行われてきた反則の呼び名を「指導」に一本化。10年からは脚をいきなり手で取る「脚取り」を反則負けとした。13年から脚取りは完全禁止。旗判定も廃止し、5分間で決着しない場合に行われる延長戦を時間無制限、抑え込みを20秒で一本に変更。14年からは女子の試合が5分から4分に短縮した。