フィギュアスケート女子で2月のミラノ・コルティナ五輪で個人、団体ともに銀メダルの坂本花織(26=シスメックス)が13日、地元の神戸市内で引退会見を開き、同い年の一般男性との結婚を電撃発表した。神戸学院大在学中に出会い、今月5日に婚姻届を提出したと明かした。21年4カ月の現役生活に区切りをつけ、今後は指導者に転身。日本を長年引っ張ってきたエースが、公私ともに第二の人生を歩み始める。
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最後の最後にサプライズが待っていた。会見開始から75分。白のセットアップ姿の坂本が、最後のあいさつで切り出した。「この場を借りてご報告があります。私事ではございますが、先日結婚いたしました」。まさかの電撃発表に報道陣からどよめきと拍手が起こる中、壇上でトレードマークの笑みを浮かべた。
お相手は神戸学院大在学中に出会った同い年の一般男性。今月5日に婚姻届を提出した。天真らんまんな坂本とは性格こそ「真逆」だというが「常に冷静で物事を考える人。でも楽しむことを忘れず、一緒に面白いことをしてくれる」と人柄を紹介。引退会見で結婚を発表することは憧れだったようで、会見後に「これをやりたかったんです!」と笑い飛ばした。
私生活だけでなく、本業でも第二の人生を歩み始める。引退後は4歳から師事してきた中野園子コーチらのもと、神戸を拠点に指導者に転身。アイスショー出演の合間を縫って、すでにリンクサイドにも立ち始めた。自身の現役時代を教え子に重ね合わせ「一生懸命練習することはすごく青春」と実感している。
指導のベースとなるのは、自らの原体験。「器用に何でも出来るわけではなかった」。21年4カ月の現役生活では、樋口新葉に勝てず、年下の本田真凜に抜かれた時期もあった。宮原知子との差を感じ、後輩の紀平梨花に敗れる日々も味わった。今や「世界一」と称されるダブルアクセルも、習得までに2年を要した。逃げずに積み重ねたからこそ、五輪で日本フィギュア最多タイの4個のメダルをつかみ、世界選手権で日本人単独最多の4度の優勝を収めることができた。「すぐに諦めないでほしい。自分がスケートをやりたい、勝ちたいと思うのであれば、一生懸命やるしかない」。子どもたちに努力の尊さを伝えていく。
ただ何より大切にしたいのは、感謝の心。恩師の中野らからは、礼儀や態度を口すっぱく指導されてきた。「感謝の気持ちを持たないと失礼。それはしっかり伝えたい。もっと良いことを言いたかったけれど、それしか思い浮かばない」。明るく思いやりに満ちた人柄で愛されたスケーター。これからは愛される教え子を育てていく。【藤塚大輔】
◆坂本花織(さかもと・かおり)2000年(平12)4月9日、兵庫県神戸市生まれ。03年度後期のNHK連続テレビ小説「てるてる家族」に影響を受け、4歳でスケート開始。17年世界ジュニア選手権3位でシニア転向。1季目から18年平昌五輪代表2枠入りし、個人6位。22年北京五輪で団体銀、個人銅メダル。26年ミラノ・コルティナ五輪で個人、団体ともに銀。世界選手権は日本人単独最多4度の優勝。全日本選手権は18年、21~25年の優勝6度。ミラノ五輪の日本選手団旗手代行。159センチ。血液型B。


