柔道男子100キロ超級の井上康生(29=綜合警備保障)が「無心」で奇跡の北京五輪代表を狙う。4日、福岡市内で全日本選抜体重別選手権(5~6日、福岡国際センター)の前日会見が行われた。今大会と全日本選手権(29日、日本武道館)の国内選考会2連続優勝が五輪代表への最低条件の井上は、絶望的な状況にも動じずに冷静な姿勢を示した。
開き直りとも取れるような笑みまで浮かべた。今大会で優勝以外なら北京五輪代表どころか、全日本選手権が「引退試合」となる瀬戸際に立たされながら、井上は「(ライバルが)どうこうじゃない。人のことはどうでもいい。思い切りいくだけ」と淡々と話した。
北京五輪代表が絶望的になり、第一線での選手生活の最後が近づいていることを自覚し、無心の境地にたどり着いた。「シドニー五輪からアテネ五輪までは日本柔道を背負っているというのを意識せずとも感じていた。今はこれまでとは違った心境ですね」。第一人者の重荷を下ろし「一人の柔道家井上康生」として、戦える環境が整った。
五輪代表争いで前を走る石井(国士舘大)が左臀部(でんぶ)故障で今大会を欠場することにも、無関心を貫いた。「自分の柔道をやるしかない。挑戦者という気持ちで臨みたい」。29日の全日本選手権の組み合わせさえ「今はまだ全く考えていない。組み合わせも見ていない。今大会にすべてをかける」と話した。
フランス国際で5位に終わり、内また中心の柔道から、100キロ級で金メダルを獲得したシドニー五輪当時の前に出て相手を崩すスタイルに戻す練習を積んだ。「考えすぎて止まった時もあったけど、自分に(大丈夫と)言い聞かせながらやってきた」。妻亜希さんも決戦へ毎日手料理を振る舞った。「(妻には)言葉以外でも、いつも力をもらっている。ありがたい」。柔道人生の集大成と言い切る今年。準決勝で棟田を下し優勝、そして全日本へ-。明日6日、奇跡への1歩を踏み出す。【菅家大輔】


