<テニス:全日本選手権>◇7日目◇15日◇東京・有明テニスの森公園

 クルム伊達公子(38=エステティックTBC)が、16年ぶりに頂点に立った。女子シングルス決勝で第9シードの瀬間友里加(21=ピーチ・ジョン)に6-3、6-3のストレート勝ち。91、92年に2連覇して以来3度目の優勝を果たした。38歳1カ月での制覇は、63年に41歳5カ月で8連覇した宮城黎子(故人)に次ぐ、戦後2番目の年長記録。藤原里華(北日本物産)と組む女子ダブルスも決勝に進み、2冠に王手をかけた。試合後は来年1月の全豪オープンの予選に挑むことを表明。来季の国別対抗戦フェド杯日本代表候補に推薦されることも分かった。

 勝利の瞬間、クルム伊達に16年前と同じ笑顔が広がった。思わず右手を突き上げたのも、16年前と同じだった。ブランクなどなかったような68分での快勝。「決勝に残るとは想像していなかった」と話す一方で、「16年ぶりに優勝して、他の選手はおもしろくないと思うが、起きてしまったことは現実」と、若手に厳しい言葉を放った。

 瀬間に粘られても「先に主導権を握ろうと仕掛けた」と速いテンポで攻め続けた。開始から3ゲームを連取。第2セットは4-3と追い上げられたが、突き放した。今大会、セットを失ったのは3回戦の青山戦だけ。連覇した91、92年はすべてストレート勝ち。選手のレベルが上がった今も、クルム伊達は強かった。

 38歳での優勝は戦後2番目の年長記録。41歳で8連覇した宮城さんの偉業が原動力になったという。「黎子さんが40歳で優勝したということがパワーの源になった。黎子さんまではいかないにしても、わたしもテニスが好きなんだなと思う」と振り返った。

 現在の世界ランク198位。日本人では6番目。しかし、復帰後、上位2人の杉山、森田以外の3選手から勝ち星を挙げた。96年以来となる日本代表復帰の可能性も出てきた。日本テニス協会には全日本の女子シングルス優勝者が翌年のフェド杯代表候補に推薦される内規がある。協会関係者は「(代表に)十分に必要な選手。推薦されるでしょう」と話した。

 試合後は来年1月の4大大会、全豪オープン予選出場を表明した。「行こうかなと思っている。AIGオープンや東レに出て、チャレンジしたいという気持ちがわいてきた」。予選3試合を勝ち上がれば、12年ぶりの4大大会本戦復帰も実現する。

 「(96年の引退時は)テニスをもう1度やるとは0・00001%も考えていなかった」と振り返る。それが勝負の緊張感を求めて復帰すると、わずか半年あまりで全日本のタイトルを手にした。「38歳になってもブランクがあっても負けず嫌いの性格は変わらない。できるだけ長くコートに立っていたい」。12年間の時空を超えて、女王の世界挑戦が再び始まる。【吉松忠弘】