日本ボブスレー界が、10年バンクーバー五輪へ向けて再び、他競技からの緊急補強を行った。陸上男子砲丸投げの日本記録保持者・畑瀬聡(26=群馬綜合ガードシステム)が、16日からの全日本合宿(長野・スパイラル)に初参加することが9日、分かった。ソフトボール日本代表の元エース高山樹里(32)に続き、男子も強力アスリートをスカウトして、世界レベルに挑戦する。

 かねて、日本ボブスレー・リュージュ連盟が興味を示していたトップアスリートが、ついに合宿に参加する。同連盟の担当者が、7月末から奈良で行われた高校総体の陸上競技を視察。その現場で、関係者を通じて畑瀬と接触した。勧誘したところ、10月初旬の新潟国体以降は陸上がオフ期間になることもあり、五輪挑戦へやる気を示したという。

 ボブスレーには、うってつけの逸材だ。畑瀬が担当するのは、ソリを30~40メートルほど押して初速をつけるブレーカー(押し役)。男子の場合、2人乗りは選手の体重を含めて390キロ、4人乗りは630キロの制限がある。選手の体重が重いほど、ソリは軽くなる。つまり、押す負担が減り、初速を出しやすくなる。

 184センチ、117キロの畑瀬は、体格的に申し分ない。砲丸投げは瞬発力を必要とするため、30メートル程度のダッシュ力なら自信を示しているという。06年には8年ぶりに日本記録を更新する18メートル56をマークするなど、当然パワーもある。日本選手権4度優勝の実績だけでなく、07年世界選手権をはじめ、2度のアジア大会に出場するなど、国際経験も豊富にある。

 先月の合宿には、女子の高山が参加して話題になったばかり。知名度はかなわないが、即戦力になる可能性は、高山に勝るとも劣らない。まずは、16日から始まる全日本合宿で、ソリを押す感触を確かめる。07年世界選手権出場の際には、中継するTBSから「心優しき日本の怪力男」とニックネームを付けられた。今夏の世界選手権には出場できなかったが、その怪力を冬季五輪に生かせるかどうか、注目だ。