<レスリング:全日本選抜選手権>◇最終日◇3日◇東京・代々木第2体育館◇男女計7階級
女子63キロ級で伊調馨(25=綜合警備保障)が優勝し、3年ぶりに世界選手権(9月、モスクワ)の代表に選出された。決勝は元世界女王の山本聖子との対決だったが、フォール勝ちで09年12月の全日本選手権に続く連勝を収めた。08年の北京五輪で連覇後は海外留学などで約1年間、長期離脱したが健在ぶりを証明。共闘してきた五輪銀メダリストの姉千春から独り立ちし、12年ロンドン五輪へ歩む。
伊調馨が力と技で山本をねじ伏せた。第1ピリオド(P)は硬さも見えた。それでも延長で相手に攻撃権を奪われた状態から戦ったが、相手の片足タックルをつぶして制した。第2Pもポイントを重ねると、1分31秒に山本の両肩をマットに沈めてフォール勝ち。09年12月の全日本選手権での対戦では第1Pを奪われるなど苦戦したが、この日は圧巻の勝利だった。「まだ世界で勝てる実力はついてない」。馨はそれでも高みを見ていた。
北京五輪までは姉の千春と共に戦った。だが姉が今春から地元青森で八戸西高の保健体育の教員となり、拠点が分かれた。馨は東京へ移り「さすらいのように」練習場所を求めた。今年は男子代表の合宿にも3回参加。佐藤満・男子強化委員長らとスパーリングし「崩し方やグラウンド1つ取ってもいろんな展開がある。これまで本能でやっていたけど、考えるようになった」と考えが変わった。
だが心の中には寂しさもあった。1月に姉が自宅を訪れた時に孤独な練習環境に「寂しい」と涙を流したという。それでも壁には姉妹のセピア色の写真が張ってあった。千春は「何で張ったのか聞いたら『常に一緒に戦っているのを忘れたくない』と馨が答えた。パネルを見て、泣きました」と明かした。
3年ぶりに世界選手権代表に選出され、北京五輪以来となる世界大会が待ち受ける。「今年から五輪に向けて、世界の舞台に帰ってくる選手が増える。そのうちの1人が自分。その中でどう戦えるか考えたい」。伊調馨の視線は世界へと向いている。【広重竜太郎】



