【パリ25日=今村健人】GPシリーズ第6戦フランス杯の公式練習が、本番会場のベルシー競技場で行われた。女子の浅田真央(20=中京大)はフリーの曲をかけた練習で、1度もジャンプを試さなかった。公式練習で成功して“勘違い”してしまったNHK杯の反省を踏まえて、あえて公式練習ではジャンプを跳ばず、緊張感を持って復活をかけた本番に臨む。

 浅田は1度も跳ばなかった。フリーの曲「愛の夢」をかけた公式練習。冒頭に予定しているトリプルアクセル(3回転半)を始め、ジャンプはすべて流した。跳び終わったイメージでポーズをつくり、次の動作に移る。スピンやスパイラルは入念にこなすが、ジャンプだけは跳ばなかった。

 「(佐藤)信夫先生に焦って無理にやってもダメと言われてやめました」。それはジャンプが跳べず8位に終わったNHK杯の反省だった。同杯の公式練習ではフル回転。最大の武器の3回転半を成功させ、連続3回転ループも決めた。これが災いした。「NHK杯では自分でもびっくりするくらい良くて、あれで期待してしまった」。

 普段の練習では完成にほど遠かったフリーに、直前練習で成功し、かえって緊張が薄れた。だからフランスでは正反対のやり方で修正に努めた。曲のないところではジャンプだけを果敢に挑む。3回転半は6度挑み成功は半分。回数をこなすたびに成功率は上がった。佐藤コーチ就任2カ月後のNHK杯では3回転の成功はSP、フリー合わせてたった2度。だが「NHK杯はまだ半分。全然しっくり来ていなかった。やることは分かっている。今季は1度もメダルを取っていない。金メダルを取ることで、次の試合にいい流れができる」と流れを引き寄せようとしている。パリは5年前、GP初優勝を飾った場所。もう1度原点に立ち返り復活に挑む。