<柔道:グランドスラム東京>◇第1日◇29日◇東京体育館◇女子48キロ級

 女子最軽量級に「リオの新星」が現れた。48キロ級で主要国際大会デビュー戦の近藤亜美(18=大成高)が、準決勝でロンドン五輪覇者、決勝で13年世界選手権覇者と、2人の金メダリストを撃破して初優勝を果たした。同じ道場出身で五輪2連覇の谷本歩実に憧れ、目指すのは「一本柔道」。相撲経験者の祖父と父親の遺伝子を持つ高校3年生が、最高の形で初陣を飾った。

 小柄な近藤の体に、しっかりと遺伝子は受け継がれていた。今夏の世界選手権決勝で浅見八瑠奈を破って優勝したムンフバットとの決勝戦。身長で上回る相手に抱え込まれ後ろに回られたが、体勢は崩れない。しっかりと受けきって、耐えて、すきを見いだす。「懐が空いたのが見えた」と右足で右足を刈りきる。そのまま体を預けての小内巻き込みで一本勝ち。「実感がわかないです」と初々しく白い歯がこぼれた。

 祖父次郎さん(享年79)、父敬造さん(52)はともに力士だった。学生相撲でならし、近藤は幼少期から体重100キロの父とじゃれ合うのが日課。小学生では、町のちびっ子相撲で優勝もした。名城大柔道部の兄孝哉さんも100キロ超級で「私だけ小さいんです」と155センチだが、幼少期から大きな家族と組み合ってきた成果は確か。血筋の体の強さに加え、大きな相手の懐に入る技術にもたける。

 五輪金メダリストの吉田秀彦、谷本歩実を輩出した大石道場に小学3年から通う。豪快な内股が武器の谷本を尊敬し、「小さい柔道はしたくない。パフォーマンスのある柔道をしたい」。映える一本柔道が信条だ。だから、準決勝で12年ロンドン五輪金メダルのメネセスを寝技で破っても、「決勝では『すごいな』と思ってくれる柔道をしたかった」と、志も高い。

 鮮烈なデビューを飾ったが、「まだスタートラインに立ったところ。これからです」。世界選手権を2度制した浅見にも「まだまだ及ばない」と自覚する。ただ、それは伸びしろがある裏返し。「(16年)リオも(20年)東京も出たいです!」。力士譲りの体を武器に「大きな柔道」を体現していく。【阿部健吾】<近藤亜美(こんどう・あみ)アラカルト>

 ◆生まれ

 1995年(平7)5月9日、愛知県名古屋市生まれ。家族は父敬造さん(52)母清美さん(48)兄孝哉さん。

 ◆サイズ

 身長155センチ、体重48キロ。「普段も51キロで減量はきつくない」。

 ◆競技歴

 名古屋市内の六郷道場で5歳から。「兄が通っていて一緒に」。小3で大石道場へ。優勝は06年小学生大会、10年全国中学生大会、11年世界カデ選手権、13年高校総体など。

 ◆体力自慢

 長距離は1キロを「3分半を切る」。高校のマラソン大会では1位。「下半身は強いです」。

 ◆進路

 来春からは三井住友海上に進む。同階級に山岸絵美がおり「技が多彩。少しでも盗みたい」。