フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第3戦中国杯で負傷した羽生結弦(19=ANA)が、頭部挫創、左太もも挫傷など計5カ所のケガと診断された。10日、日本スケート連盟が発表した。8日のフリー前の練習で閻涵(エンカン、中国)と衝突して流血しながら、強行出場して2位。9日に緊急帰国して精密検査を受けていた。脳に異常はなかったが、全治は2~3週間で、第6戦NHK杯(28~30日、大阪・なみはやドーム)の出場は微妙となった。

 ダメージは全身に及んでいた。頭、腹、脚。診察結果には5つの症状が並んだ。(1)頭部挫創(2)下顎(がく)挫創(3)腹部挫傷(4)左大腿(だいたい)挫傷(5)右足関節捻挫。懸念された脳振とうの後遺症は見られず、脳への影響はなかった。骨折や腱(けん)の負傷もなく不幸中の幸いだったが、決して軽くはない。強行軍でフリーを滑り切った精神力の強さは際立つが、今後への影響は避けられない。

 日本連盟を通じて出したコメントには、「帰国後、病院へ行き精密検査を行いました。皆様にはご心配とご迷惑をおかけしてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいですが、まずは、ゆっくり休み治療したいと思います」とあった。

 頭や顔のケガが競技上まれで、フィギュアに詳しいトレーナーは「ジャンプの時の平衡感覚に影響があるかもしれない」と話す。閻と激突後、顎付近をリンクにたたきつけて裂傷を負っており「今後、むち打ちなども心配」という。中国から帰国した日本連盟の伊東フィギュア委員長は、脚の状態も思いやった。足首の捻挫は13年世界選手権前からの古傷で、さらに太ももも打撲。「無理をしないで安静に努めてほしい」と話した。

 28日からはNHK杯が始まるが、出場は微妙となった。欠場すれば、シリーズ上位6人で争う来月のGPファイナルの出場もなくなる。先を見れば、年末には全日本選手権も控える。2連覇を狙う来年3月の世界選手権の代表選考会も兼ねるが、選考基準には「救済措置」がある。過去に世界選手権3位以内に入賞した実績があれば、シーズン前半にケガして欠場した場合も選考の対象に加える。羽生ならば、欠場しても代表に選ばれる可能性は高い。

 もともと、10月のフィンランディア杯を腰痛で欠場し、体調面での不安はあった。今後を見据えるなら、思い切って長期休養を選択するのも選択肢の1つだろう。コメントの最後には「今後のスケジュールについては、ケガの回復具合をみながら検討したいと思います」とあった。