<フィギュアスケート:全日本選手権>◇第1日◇26日◇長野・ビッグハット

 男子ショートプログラム(SP)が行われ、3連覇がかかるソチ五輪金メダリストの羽生結弦(20=ANA)が94・36点で首位発進した。4回転ジャンプは決めたが、後半の3回転ルッツでミス。今季の課題として模索を続ける一本を決めきれず、順位以上に悔しさを募らせた。

 演技開始から1分53秒、再びの鬼門だった。

 後半に差し掛かって挑む3回転ルッツ。後ろ向きの助走から、左足のエッジ(刃)の外側で跳び上がり、右足のつま先で氷を蹴って宙を舞うジャンプ。踏み切りと同時に羽生の体は大きく傾き、軸が曲がった。着氷でバランスを崩す。その後に連続で続ける3回転が2回転に。とっさに練習でもやったことがない手を上げて加点を稼ぐ機転をみせたが、「またか…」。フィニッシュポーズを解くと、少し肩をすくめた。順位より悔しさが勝った。

 「前回と同じ出来。同じミスをしてしまった」。2週前、2連覇を飾ったGPファイナルでもバランスを崩し、続けた3回転トーループで転倒。それどころか、中国杯でも着地が乱れ、続くNHK杯では両手をついた。これで4戦すべて、ルッツは失敗続き。「毎回毎回注意すべきところが違っている。もっとポイント、ポイントを狭めていかないといけない」。問い続けるが、解答がでない。

 今季は中国杯での激突事故で負傷したが、もともと腰痛がひどく、今季初戦に予定していた10月のフィンランディア杯を欠場していた。原因はジュニア時代。練習で背骨の関節の一部が変形し、「骨棘(こっきょく)」に。その突起が痛みを起こしていた。今後も完治は難しいのが現状だ。

 いま、ルッツを跳ぶ直前にどうしても前かがみになる。それがバランスを乱す要因の1つだが、それも腰痛と無縁ではない。「精神状態や疲れ方で、ちょっとしたズレが1つ1つ起きてくるのだと思う」。18年平昌五輪での2連覇へは、じっくりと向き合い、改善策を追求しないとならない。

 ジャンプにミスが出て、それ以外のスピン、ステップでも最高難度のレベル4ではなく、3にとどまった。中国杯から8週間で4試合目。ファイナルが行われたスペインから16日に帰国後は、1週間体を動かすことができなかった。本人は言い訳はしないが、万全には遠い状態にある。その中で冒頭の4回転トーループを決めた結果には、「まあまあまとめることはできた」と手応えもある。

 試行錯誤は続くが、悲愴(ひそう)感はない。「まだ足りない。次に向けた収穫にはなった」。失敗は決して無駄にしない。今日のフリーでも、その収穫を生かす機会はある。【阿部健吾】

 ◆ルッツジャンプ

 後ろ向きで踏み切る中で最高難度のジャンプ。6種類のジャンプで唯一、外側のエッジに体重を乗せながら左回転で滑り踏み切る。その際に右足のトー(つま先)で蹴り上げる。ジャンプの回転は踏み切りと反対方向のため、空中で方向転換する形になるため難度が高く、3回転ルッツの基礎点は6・0点。