大相撲名古屋場所(13日初日、愛知県体育館)の新弟子検査で「珍手」が出た。7日、名古屋市内で行われ、受検者5人の中で1人、細身の大阪・枚方市出身の田井雅人(17=式秀)は検査前、2リットルの水入りペットボトルを持っていた。なぜなら、前日は65キロ近くあった体重が、1時間半前に量ると63キロに減っていた。体格基準(167センチ、67キロ)を下回っていたからだ。

 これはまずいと、師匠の式秀親方(元前頭北桜)の発案で10分おきに、おにぎりを計4個とうどん2杯、300ミリリットルの豆乳2本を腹におさめた。そして、最後は水。トイレが我慢できず少し“放出”してしまったが、師匠の命令で行為中もペットボトルを口に。1本半、約3リットルを飲み干した。

 迎えた運命の体重測定。「自分では見なかった」という針は67キロ手前までは振れた。検査担当の井筒親方(元関脇逆鉾)も「これは67キロ?」と苦笑いしつつ、ぎりぎりでクリアできた。

 「すくすく育つように」と、しこ名を「育盛」(そだちざかり)とする田井は検査後、すぐトイレへ。「飲むのをやめたら落ちると分かっていたので耐えた。祈る気持ちでした。10場所は勝ち越せないと思うけど、体を大きくし、技を磨いて力をつけたい」と第1関門の突破に目を輝かせた。

 元十両天凰山を父に持つ近藤正道(19=式秀)ら4人もパス。合格者は内臓検査の結果を待って、初日に発表される。全員合格なら今年の新弟子数は76人となり、昨年の73人を上回る。【今村健人】