丸の巨人へのFA加入は、来季のセ・リーグ勢力図に大きな影響を及ぼす可能性がある。中途半端な選手ではなく、本当のレギュラーの移籍。2年連続でMVPを獲得し、3連覇の軸を担った選手を失った広島の戦力ダウンは否めない。現時点では4連覇が難しくなったと言えるほどの流出だろう。

何と言っても大きいのは「タナキクマル」の並びが崩れることだ。強力なカープ打線を支えた1、2、3番。この3人から鈴木や松山へ、という流れが対戦相手にとっては一番嫌だったはず。今季の打率3割6厘、39本塁打、97打点という単純な数字を失う以上の影響がある。

そして丸という選手を語る上で、体の強さを忘れてはいけない。今年は右太もも裏負傷での離脱があったが、その時点まで700試合連続出場。監督、ベンチにとってケガなくフルシーズン戦える選手がいることが一番ありがたい。年々レベルを上げてきている打撃技術はもちろんだが、年間を通して計算出来る存在ほど、心強いものはない。

そんな強力なカードが加わった巨人は、これ以上ない戦力アップとなった。投手陣に不安はあるが、このオフの補強で打線の厚みは確実に増した。来季は打って打って打ちまくり、チーム総得点750~800点が目標ではないか、と思えるほどだ。長野、陽岱鋼らの外野陣の競争も相乗効果を期待できる。

自分も横浜(現DeNA)から中日にFA移籍したが、古巣との対戦は普段以上に気合が入ったのを覚えている。当然ヤジも飛んできたが、それは覚悟の上だった。丸に対しても、カープファンの多さを考えると、新たな本拠地・東京ドームでもヤジが飛ぶかもしれないが、それをプラスに捉えるくらいの心持ちでいてほしい。一方、広島には丸という大きな穴を埋める若手の台頭に期待したい。野間が中堅に入るようになるのではないかと思うが、持ち前の選手層の厚さをみせてほしい。(日刊スポーツ評論家)