5連勝中の阪神打線が状態を上げている。5月終了時点でリーグワーストの155得点、1試合平均2・87得点。早くも昨季を超える13度の完封負けを喫していた。それが5連勝中は1試合平均6・2得点だ。交流戦Vも狙える虎は今後、リーグ最下位からの浮上を狙う上でさらに何が必要なのか。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)は「どうぞの1点」を確実にモノにする重要性を力説した。【聞き手=佐井陽介】
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5連勝中の阪神打線は底を脱しつつあります。1、2番の出塁が増えて、走れるようになって、クリーンアップにチャンスで回せる場面が増えています。ここから一気に浮上していくためにも、今後は試合序盤の「相手がくれる1点」をより一層大事にしてほしいと思います。
6点差をひっくり返した3日の日本ハム戦でも、実はもったいないシーンがありました。2点を追う1回裏1死三塁、3番近本選手が空振り三振に倒れた場面です。この時、二遊間は前進守備ではなく「1点はどうぞ」という定位置シフト。しかも三塁走者は俊足の島田選手でした。もちろん近本選手の頭の中にもあったでしょうが、内野ゴロさえ転がせば、確実に1点を奪えていました。
開幕から2カ月以上が経過。阪神はここまで「相手がくれる1点」を取りこぼしているケースが多いように感じます。もしかしたら常に最高の結果を求める選手が多いのかもしれません。先ほど例にあげた1死三塁にしても、タイムリーを打てるに越したことはありません。一方で内野フライと三振だけは避けたい場面。二遊間が後ろに下がっているのであれば、特に追い込まれてからは「ゴロでも1点」といった発想転換も必要ではないでしょうか。
無死満塁でも考え方は同じです。ベストは満塁弾や適時打。ベターは犠飛や内野ゴロ併殺崩れで1点。二塁封殺経由のゴロ併殺打でも1点は入ります。ここで内野フライや三振といった「最悪」をつぶして「最低限」を優先できるか。そんな考え方をできる選手が増えれば、少なくとも何十イニング連続無得点といった状況は減らせるはずです。
特に序盤からビハインドを背負った試合では、5回までに1点を取る方法が多くあります。「相手がくれる1点」をきっちり積み重ねていけば、いつのまにか緊迫したゲームに持っていけるものです。そうなると当然、相手バッテリーには重圧がかかります。1点もあげられないとなれば、1発を警戒しての四球が増える。走者が出れば打者に集中しづらくなる。結果、複数得点で逆転できる可能性が高くなります。
タイガースは現状、序盤の好機で2、3点を取りに行った結果、0点が続くパターンが少なくありません。もう少し9イニングトータルで点を取る、という発想を持ってもいい気がします。投手陣が3点以内に抑えてくれる確率が高いのであれば、最終的に3点以上を取れば負けない。そういう考え方で1点ずつ積み重ねる作業を続ければ、これほどまでに完封負けが多いこともなくなるはずです。
今年はよく「あの時に1本出ていれば…」という声が聞こえてきます。ただ、1本が出なくても点数を取る方法はたくさんあります。四球、盗塁、犠打、1死三塁から内野ゴロでも1点は1点。プラス思考を大切にした上で、最低限の選択肢を数多く持っておくことも大事です。ヒット3本が出ないと点を取れないではなく、1個のアウトで得点できる形を突き詰めていけば、意外に点数は取れるものです。単純な話、1試合に1回「相手がくれる1点」を取っていけば、年間で143点も得点を増やせるわけですから。
特に試合序盤は、相手が1点をくれるケースが多々あります。ここで安打が出なくても確実に点をもらっておくという作業は、9回をトータルで考えた時、非常に重要になってきます。「相手がくれる1点」をきっちりモノにして、終盤のガチンコ勝負に持ち込んでいく。そういった戦い方を増やせれば、おのずと順位を上げていけるはずです。(日刊スポーツ評論家)
▼阪神打線の今季の得点圏打率は2割1分8厘(431打数94安打)。これはセ・リーグ最低で、12球団でも西武に次いでワースト2位だ。得点圏の打席で、大山が2割3分3厘(60打数14安打)、佐藤輝が2割1分9厘(64打数14安打)と、主軸のバットが湿っている。
▼阪神の今季の満塁でのチーム打率は3割2分6厘と好調だが、無死満塁ではまだ安打が出ていない。今季6度あったこの絶好機では、内野ゴロと犠飛で3点を挙げているのみ。最高のチャンスで一気に押せ押せ、といったシーンはない。




