コロナ禍のヤクルトが3連敗を喫し、マジックは対象チームのDeNAが勝利したため消滅した。最下位の中日は首位ヤクルトには強く、対戦成績8勝5敗。それでも健闘したと言える最下位中日について、西本聖氏(66=日刊スポーツ評論家)が課題を挙げた。

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首位を独走するヤクルトだが、コロナの影響で戦列離脱者が多数出ている。こういっては申し訳ないが、他球団は差を詰める大チャンス。低迷する中日も最下位脱出に向けて足掛かりにしたい試合だった。

結果は4-1で中日の連勝。しかも2試合連続の逆転勝ち。結果だけを見れば文句なしの勝利だが、内容はそれほどよくない。塩見、山田、中村の誰か1人でもスタメン出場していれば「勝てなかったのでは?」との思いがある。そう思う根拠を振り返ってみたい。

まず、先発は3年ぶりの勝利を目指す笠原だった。初回の立ち上がり、2番の山崎に粘られ四球を出すと、内川には二塁打を打たれた。ここから初回とはいえ、一塁も空いているだけに村上への四球は仕方ないだろう。

しかし気になったのは、ここまでの攻めでほぼ内角を攻めていないことだった。中日ベンチも感じたのだろう。落合投手コーチがマウンドへいった。

何を指示したのかは分からないが、ここから内角を攻めるようになった。オスナには外角低めのスクリューボールを右前適時打されたが、西浦には内角の真っすぐで併殺。1失点で踏みとどまった。

5回も危なかった。1死から1番の並木にバントヒットを許した。これは三塁手の高橋周がもう少し前で守り、バントを警戒しなければいけなかった。

そして1死後、打席に内川を迎えたのだが、盗塁を警戒してけん制球を多投。結局、3球目に走られ、内川にもストレートの四球。最悪の状況に自ら陥ってしまった。

中日バッテリーはヤクルトに勝つための戦術を分かっていない。並木に盗塁されても、内川を抑えていれば村上は申告敬遠でいい場面。それを理解していれば、盗塁より内川への四球だけは避けなければいけない。それでも村上は四球で、満塁からオスナが遊飛で助かったが、一歩間違えていれば逆転されていた場面になっていた。

8回1死一塁からもオスナに四球。ここでも落合投手コーチがマウンドへ。何を指示したかは分からないが、後続を連続三振に打ち取って無失点に抑えた。

マウンドへひと息入れにいった落合コーチのファインプレーともいえるが、捕手の木下にはもっと正捕手としての自覚を持ってリードしてもらいたい。村上と勝負を少しでも安全に避けるなら、前後の打者への四球はなんとしても避けなければいけない。1番から3番までの打者には、状況によっては「盗塁OK」でいい。捕手として盗塁されるのは嫌だろうが“村上対策”を徹底してもらいたい。

厳しく指摘したが、木下は3番打者として全打点をたたき出した。打撃では見事な活躍だった。これで捕手として広い視野も持ったリードができれば、チームの最下位脱出の可能性は大きく広がってくると思う。(日刊スポーツ評論家)