セ・リーグはヤクルトが独走。他球団にとっては厳しい展開だが、逆転優勝の可能性があるとしたら阪神とDeNAだと思っている。戦力的に2桁の連勝ができるチーム力があるのは、その2球団ぐらいしか思い浮かばないからだ。

そんな阪神が巨人に2連勝し、3戦目を迎えた。皆さん、ご存じのように巨人は大量のコロナ感染者が出て、ベストな状況からは程遠い状態。大型連勝を狙う意味でも、巨人に3連勝したいところだった。

しかし、先発したウィルカーソンが2回につかまった。球審が際どいコースをボール判定し、集中力を欠いてしまった。何を投げても中へ中へと入るようになり、ベストではない巨人打線に打ち込まれた。

2回裏巨人無死一、二塁、ウィルカーソンは打者吉川を迎えたところで降板となる(撮影・加藤哉)
2回裏巨人無死一、二塁、ウィルカーソンは打者吉川を迎えたところで降板となる(撮影・加藤哉)

先発投手が1回0/3を5失点。結果は散々だが、果たして投手の責任だけだろうか? 助けてやれる機会はあった。

3点を失い、なおも無死一、三塁のピンチで、打席に投手の山崎伊を迎えた。「バントかなぁ」と思って見ていると、ベンチにいた原監督がバットを振るジェスチャー。バッティングのいい山崎伊だけに、強攻策を指示したのだろう。

阪神からすれば、これ以上の失点は致命傷になりかねない。ここでどういう作戦に出るかを見極めるのは重要。巨人ベンチの動きを注視していれば、原監督のジェスチャーは分かったはず。「打ってくるぞ!」という声で注意を促したり、ボール球で様子を見る必要があった。ところがウィルカーソンの初球はど真ん中のストレート。あっさりとタイムリーを打たれてしまった。

2回裏巨人無死一、三塁、右前適時打を放つ山崎伊織。投手ウィルカーソン(撮影・鈴木みどり)
2回裏巨人無死一、三塁、右前適時打を放つ山崎伊織。投手ウィルカーソン(撮影・鈴木みどり)

攻撃面でも繊細さを欠いていた。3回無死一、二塁のチャンスを作って、打席は投手の石井だった。この回1点か2点でも取っておけば、まだ試合は分からない。石井が送りバントの構えをすると、一塁手の中田は極端な前進守備。これだけ前に出られると、よほどいいバントでないと、犠打は成功しない。ベンチからバスターを指示してもいいし、そういった声を出すだけでも効果はあったと思う。しかし普通にバントし、打球を処理した中田が三塁に送球。あっさりとアウトになり、無得点で終わった。

3回表阪神無死一、二塁、送りバントに失敗し一ゴロに倒れる石井。投手山崎伊(撮影・鈴木みどり)
3回表阪神無死一、二塁、送りバントに失敗し一ゴロに倒れる石井。投手山崎伊(撮影・鈴木みどり)

好調な阪神だが、プレーしている選手任せにせず、ベンチや守っている野手が声を出すなど、一体感がほしい。全員で戦っているという雰囲気が出れば、一気に連勝街道も可能だと思う。

苦しい戦いが続く巨人も、山崎伊がいい投球をした。四球を出さず、テンポよく投げたから、好守にもつながったと思う。阪神にとっては、勝てる試合に勝てず、苦しい巨人は貴重な1勝を拾った。(日刊スポーツ評論家)