打線の状態が悪く、連敗が続いているチームが勝利するためには、やはり先発投手の踏ん張りが必要になる。

野球という競技は、どんなに得点できなくても、失点しなければ負けない。私は本格派投手ではなかったが、ここ一番で負けられない試合や、打線が湿りがちのときは「1点もやるものか。俺が点をやらなければチームは負けない」という気持ちで投げていた。阪神の先発才木浩人のピッチングには、そういう気迫を感じた。

ロッテといえば、リードを許した土壇場の9回に追いつき、11連勝につなげている。加えて1点をリードしているとはいえ、その得点は初回の先頭打者本塁打によるもの。究極の「スミ1」と言っていい。しかも9回裏のロッテ打線は2番から始まる。阪神サイドからすると、誰もが「嫌な予感」を感じていたと思う。

嫌な予感は、どんどん大きくなった。先頭の小川が中前打で出塁。続く高部は2ストライクからショートへの内野安打。ボテボテの打ち取った打球がヒットになるのだから、たいていの投手なら動揺しただろう。だが、マウンドの才木の心は、強気のままだった。

4番ソトに対し、2ストライクから2球フォークを見逃されてボール。5球目の真っすぐも、内角にボールとなった。フルカウントで才木の投球スタイルなら、真っすぐかフォークの二者択一だろう。しかしフルカウントになるまでの経緯を考えると、フォークなら見逃され、内角真っすぐならば2球続けることになる。配球的に苦しい状況だった。

ここから阪神バッテリーは内角への真っすぐを選択した。同じコースへ同じ球種を続けるのは勇気がいる。バッターからすれば、同じ軌道かそれより内側なら見逃せばいいという目安になる。そして、内角を厳しく突こうとすれば死球の可能性だって上がる。さらに内角球は少しでも甘くなれば、逆転の長打を浴びる可能性もある。そんな状況の中、才木は見逃せばギリギリのボールになりそうな内角へ、最高の真っすぐを投げ切った。ドン詰まりのショートゴロゲッツー。続くポランコもセカンドゴロに打ち取り、1-0の完封勝利で連敗を止めた。

阪神からすれば、この才木の快投を無駄にしてほしくない。今試合ではミエセスを左翼にいれたが、阪神は投手を中心に守り勝つ野球をしなければいけないチーム。交流戦でDHがあるとはいえ、ミエセスを守備に就かせるオーダーは疑問が残る。実際、ミエセスの後逸で危ない場面があった。打てない打線のテコ入れは仕方ないが、やりすぎるとチームの持ち味を消し、バタバタしているように感じてしまう。連敗は止まったが、まだまだ我慢の戦いは続きそうだ。(日刊スポーツ評論家)

ロッテ対阪神 9回裏ロッテ2死三塁、ポランコを二ゴロに仕留め完封勝利し、ガッツポーズする才木(撮影・鈴木みどり)
ロッテ対阪神 9回裏ロッテ2死三塁、ポランコを二ゴロに仕留め完封勝利し、ガッツポーズする才木(撮影・鈴木みどり)
ロッテ対阪神 力投する阪神先発の才木(撮影・横山健太)
ロッテ対阪神 力投する阪神先発の才木(撮影・横山健太)