1月4日に70歳で死去した星野仙一氏が監督を務めた阪神と楽天が16日、沖縄・宜野座で練習試合を行った。両軍を優勝に導いた星野監督の右腕としていつも寄り添い、今季から楽天に戻った佐藤義則投手コーチ(63)は試合前、「また一緒に戦えると思っていたんだけど…急だな」と寂しそうに言った。

 星野監督は「ピッチャーはヨシに任せておけば大丈夫」が口癖だった。佐藤コーチは「監督から『こうしろ』と言われたことは1回もなかった。ブルペンに来ても、投手に何かを言うことはまず、なかった」と打ち明け「ただ」と続けた。

 佐藤コーチ 絶対にやってはいけないことをやった時は、本当に怒っていた。投手がやってはいけないこと…いろいろあるけど、星野監督は打者から逃げるというか、とにかく、四球だったな。優勝が迫った時期に四球でも出したら、主力でもすごい勢いで怒ってたよ。そこは大事にしているかな。

 ブルペンに向かう足を止めて思い出し、最後に「残されたみんなで頑張ろうと約束したんだ。頑張るしかない。やるしかないからな」とつぶやいた。

    ◇  ◇    

 先発した藤平尚真投手(19)は「星野の教え」を遂行した。3回打者9人、無四球、無失点。直球でどんどん押し、売り出し中の阪神ロサリオにも真っ向勝負を挑み、空振り三振に封じた。星野氏は2年前「間違いなく将来、楽天のエースになれる器だ」と藤平を強くドラフト1位に推していた。遺志を継ぐ人間がそれぞれのチームにいて、特別な気持ちを持って戦う1年。「星野監督はめったに褒めること、なかったけど。だから褒められたら余計、うれしいんだよな」と佐藤コーチ。空の上から「やりよるな」と藤平を褒めたに違いない。【宮下敬至】