神宮球場にあるヤクルトのクラブハウス前に、突然、悲鳴が起きた。

 5月25日、DeNA戦に向けた練習前の午後だった。クラブハウスの横にある草木が生い茂る一角の外枠に、緑のような金色のような、太さが自転車のタイヤサイズの物体が現れた。目を凝らすと、にゅるにゅる動いている。蛇だ。しかも全長1メートルを優に超えている。クラブハウスの前で出てくる選手を待っていた報道陣が、一斉に「ぎゃー」と声を発した。

 5連敗中のチームの前に登場した1匹の蛇。蛇は縁起がよく、運気が上がるという説もある。この日に着用した緑色のユニホームと色が似ていなくも、ない。もしや、これは吉兆なのでは? 小川淳司監督は「本当かどうか分からないけど、家に住み着くといいっていうもんね。金運よりも白星がいいな」と笑い、青木宣親外野手も「今回で連敗が止まるね」とほおを緩めた。

 数時間後。今季ワーストの19被安打14失点で大敗した。蛇の効果はなかったのかなと思いつつも、翌日から2連勝を飾った。蛇が現れることは、幸運が訪れる兆候という説もあるらしい。手ごわいパ・リーグの猛者たちと戦う交流戦が、29日から幕を開けた。ヤクルトは毎年、苦戦を強いられている。クラブハウスに訪れた“珍客”が、今年は逆襲の兆候をもたらしてくれたと信じたい。【ヤクルト担当 浜本卓也】