初めてプロ野球担当になったのは06年11月だから、干支(えと)が1周してしまった。駆け出しの頃、先輩に言われたのは「見ろ」。自分の目で見て感じた疑問を取材相手にぶつけるのが基本と理解した。一応、若手から中堅になった今でも、試合前の練習から「見る」ことを心掛けている。

 西武秋山翔吾外野手(30)が、いつもと違う練習をしているのを見た。3日の日本ハム戦の前。普段のティー打撃はトスしてもらったボールを打っているが、この日はティースタンドに置いたボールを打っていた。いわゆる、置きティーだ。春季キャンプではやっていたが、シーズン中は珍しい。本人にぶつけた。

 秋山 将平が、すごく良いバッティングをしてたんです。バットを内から出して、きれいな打ち方。こういうのを忘れてたな、と思いました。

 将平とは、同じ左打ちの外野手である2年目の鈴木のこと。詳しく聞くと、1日のイースタン・リーグ巨人戦のCS放送を録画していたという。秋山は、その日はデーゲームで楽天戦。試合後、録画を見て、鈴木が坂本工から放った中前打に目を奪われた。「そんなに状態は悪くないんですが、一昨日(1日の楽天戦)ノーヒットだったこともある。もう1度、引き出しを確認しておこうと思って」と続けた。バットを内から出すスイングを置きティーで繰り返した。ボールが止まっている分、自分の間で確認しながら打てる。

 まず驚いたのは、2軍戦を録画してまで見ていることだ。さらに、ずっと後輩である鈴木に目を留めたこと。実績は関係ない。良いものは良いという、あるべき姿勢だ。

 3日の日本ハム戦。秋山は1安打を放ち、12球団トップの安打数を106に伸ばした。シーズン208本ペースで、自身が15年に打ち立てたプロ野球記録の216本をうかがう勢いだ。根底には「見る」があった。サッカーワールドカップを「見る」あまり寝不足の記者と一緒にするのは失礼だが、私も「見る」ことを忘れないようにしよう。【西武担当 古川真弥】