きっかけは球界関係者の一言だった。「首都リーグの2部に、鉄砲肩の捕手がいる」。高校野球の夏の地方大会が開幕を迎える中、大学球界にドラフトの“隠し玉”を見つけた。独協大学・古谷勇斗捕手(4年=藤代)。二塁送球の最速は1・85秒で、2部ながら、今春リーグ戦では打率3割6分8厘。自身4度目のベストナインを獲得した。

 今春のリーグ戦を視察したスカウトは「ドラフトの戦略にも絡むので…」と声を潜めながら、古谷の評価を話した。「二塁送球は大学ジャパンに入った選手にも引けは取りません。平均タイムは1・9秒を切るあたり。(元中日の)谷繁さんのように、捕ってから早く、攻守で面白い素材です」と言った。

 今や隠し玉と注目されるが、藤代(茨城)では歴史的な敗戦で注目された。3年夏の甲子園、初戦の大垣日大(岐阜)戦で1回表に8点を先行しながら、10-12で敗戦。8点差の逆転負けは97年の市船橋-文徳戦以来、史上最大タイだった。1回の1打席目に左前打、2打席目にランニング本塁打による3ランを放った古谷は「野球は最後まで何があるかわからないと知った」と回想した。

 「雑草魂」ではい上がった。中学時代の取手シニアでは3年春の全国大会で優勝したが、控えの遊撃手。大学1年春からレギュラーも、その春の東海大戦で「1試合に5~6個」の盗塁を許した。「負けたくないと思って、今があります。中学の控えも今まで頑張れた原動力ですし、その経験は僕の強み」。目標はソフトバンク甲斐。この秋「古谷キャノン」が注目を浴びそうだ。【アマ野球担当 久保賢吾】