野球ファンには、夏の甲子園100回大会で準優勝した金足農・吉田輝星投手の「球数」がどう映ったのだろう。興味深かったので、僕のツイッターで22日から2日間、簡単なアンケートを行った。あえて球数制限に絞った2択から選んでもらう形式にした。1290票の結果は以下の通りだった。
問題ない(球数無制限でいい)49%
問題あり(球数制限すべき)51%
吉田投手は秋田大会から甲子園決勝まで11戦で10完投。1517球を投げ、メディアは肩肘へのストレスを懸念する「球数問題」を指摘し、球数制限を設けるアイデアも出る。かけがえのない一戦を勝ちたい、勝たせたい心情がほとばしる一方で、腕をちぎるように投げるエースの肉体的負担への心配は募る…。連日のように力投する姿を見て、ジレンマを抱いた。
そういう思いが定まらない感情は多くの人も持つようで、伯仲したリサーチ結果にも表れた。「勝つ=みんなのため」。ひたむきに勝ちに向かう姿に共感する日本らしい美徳もにじみ出る。しかし、たとえば個を重んじるとされる米国で、同じ質問を問うたら、どんな答えが出るだろう。「故障しない=自分のため」。大リーグの公式サイトでは「ピッチスマート」のページを設け、8歳以下から22歳まで年代ごとに区切り、1試合の球数と回復に要する日数のガイドラインを設けている。投げることへのアプローチはさまざまだ。
今回、回答の選択肢に設けなかったが、日程を問うフォロワーの声もあった。「勝ち進むほど、連投になる。なぜ休養日が1日だけなのか」。これまで高校野球で何度も議論されたが、答えは簡単には出ない。
プロ野球の現場でも声を集めた。高校時代に夏の甲子園でベスト8まで進んだ関係者は「なるべく投げさせたくない思いはあるだろうけど勝ちたい。『俺がいきます』となると思う。変えるなら、日程を見直すとかするしかない。準決勝の前に1日休みがあったのはいいこと」と話す。連投の過酷さを「次の日、朝イチの先発で肩が上がらない状態だった」と振り返った。
別の関係者も「難しい問題」と前置きし「(球数制限の)肯定派は、その選手の将来のためにと思う。否定派は仲間のため、勝つためにと思う。自分も1人で投げてきたけど、プロに入って手術した」と明かす。投手は、投げるほどに肩や肘を摩耗していく。プロ入り後に手術した、この2人のように、蓄積疲労でメスを入れる投手が後を絶たないのも厳然たる事実だ。
さまざまな見方がある。選手をケアする医療担当者の1人は「投球は、ひねりが加わる回旋の動きで(肩肘周辺の)毛細血管が切れるのは間違いない。ただ個人差もあるし、あの球数が悪いとは言い切れない」と説明する。試合で投げる技術は、実戦の場数がモノを言う。「投げることで技術は上がる。ゲームフィットネス(試合における総合的な体力)を高める意味では吉田投手が投げ続けたのは良かったとも言えます」。ただ「球数だけで議論されすぎです。肩や肘の可動域チェックなどを、もっとこまめに行うという方法もある」と警鐘も鳴らした。
スポーツ科学の研究成果もあり、歳月とともに「常識」は変わっていく。いかに投手を傷つけず、勝ちを追い求められるか。100年後へと向かう野球界の課題だろう。【阪神担当=酒井俊作】





