何げない、その言葉はすごく印象的だった。これが一流のプロなのかと耳に残った。

今季、史上54人目の2000本安打を達成した西武栗山巧外野手(38)。巧みなバットコントロールで安打を重ねるベテランは、名球会入りを決めた節目の1本をこう振り返った。

「結果としては、あれは理想なのですけど」とした上で、こう付け加えた。

「自己満足で言うと、あれはファウルでよかったんですよね」

何もファウルで打ち直し、ホームランで華々しく決めたかったとかいう話ではない。捉えたのは、外のボール気味の変化球。少し泳ぎながらも、しっかり芯に当て、レフト前にライナーで運んだ。

なぜファウルでよかったのか-。

「ボール球なので。もっと甘いところに来た球を打つ方というのが大切」

結果とは別にある内容。カウントは1ボール2ストライクと追い込まれていたが、外のボール球とヒットにするのが難しい球を、フェアゾーンに入れたことを反省していた。もっと確率の高い球を打つべきだったとした。まさに打撃の求道者だった。

試合前の準備は細部に及ぶ。その1つがホームベースとバッターボックスのラインが平行かどうかの確認。もしも、ラインがずれていれば、ストライク、ボールを判断する「距離感」に、誤差が生まれる。わずかであろうが、それを事前に把握しておくことで、うまく対応する。偉大な栄光の記録の裏には、細かで地道な積み重ねがあると、あらためて知る。

来季は「安定感が欲しい」と言う。「インパクトの場面で打つのもそう、数字以上に安定感があるでもいいし」と続ける。通算2000安打で満足はしない。「僕にとっては、ここからの1本がすごく価値のある1本だと思っている」。来季はプロ21年目となる38歳。その向上心は果てしない。【遊軍=上田悠太】