コツコツとした積み重ねに勝るものはないが、1つのことで大きく変わることもある。西武渡部健人内野手(23)にとって、2月2日は、その転機になるかもしれないと感じている。

1年目の昨季はイースタン・リーグで本塁打、打点の2冠王。体重112キロの秘める長距離砲としての資質は疑いようがない。ただ、1軍では1本塁打だった。高いレベルのピッチャーを相手にすると、捉えたつもりのストレートが真後ろへのファウルになる。それが課題で、渡部は模索をしていた。

2月2日のフリー打撃。約60スイングしたが、打球は1本もフェンスを越えていかなかった。スイングも少し窮屈。たしかに肌寒い気温も一因にはあっただろう。ただ、弾道もホームランバッターの、それと違い、魅力はやや欠けていた。本人も「何か詰まるな」と感じていた。

その後だった。階段を上がれなくなるほど厳しい90分の特守を終えてから、平石打撃コーチに「打撃練習をしたい」と志願した。松井ヘッドコーチも加わった居残り練習で、スイングが変わった。より正確に言えば、似たことは前から言われていたが、ある意識を持つことで、「非常にいい感じ」との手応えをつかんだ。

変えた場所は「左足のつま先」、動作としては「当たってから解放する」ことだった。

翌日3日のフリー打撃。正確な数字をカウントできておらず恐縮だが、打球は楽にスタンドまで届いた。外野深くまで飛ぶ打球の数は格段に増えた。フォロースルーした時の「左足のつま先」を見てみる。DeNA大田のようにと言えば、少しイメージしやすいだろうか。つま先は豪快に「解放」し、投手の方向に向いていた。今までの「固める」形とは、まるで変わっていた。

まだまだ守備も含め、課題は山積みだが、壁を乗り越えてブレークする未来を予感させる。元気な声で、表情も豊か。カメラマンや記者も含め、自然と人をひきつける不思議な魅力も持ち合わせる。そんな人間味も含めて、思わず期待をしたくなる。【西武担当=上田悠太】