捕手は扇の要として投手陣をリードする。クリーンアップは得点の源となる。この2つの役者の出来は、試合の勝敗を大きく左右する。

そして改めて思う。西武森友哉捕手(26)は、2つの重責を1人で担っていたのだと。そのプレッシャーたるや計り知れない。

右人さし指基節骨の骨折は、2日試合後のロッカーでマスクを投げた動作が起因するものだった。「しっかり考えなさいと。チームとして許されることじゃない。あいつ自身が野球観をしっかり変えて、またチームのために泥だらけになってやってくれるのを望む」と辻監督。グラウンドの外での行動で、結果的に戦線を離脱することになった。「チームとして許されることじゃない」行動だったことは間違いない。

その大前提の上で、ここに記したい。森の胸に秘めていた強い思いを。口にしていた言葉を思い起こす。

「バッテリーで勝ちたい」、「若いピッチャーを自分が積極的に引っ張っていければ」。そう何度も繰り返していた。そしてドラフト1位の隅田についても、よく話していた。

オープン戦でロッテ佐々木朗と対戦した時は、わざわざ「でもうちの隅田も負けていないです」と。また開幕前にも「(隅田の球には)新しい発見がある。こういう球投げたら、こういう反応するんだという感覚ができた。自分にとってもすごいプラス。勉強になりました」とも言っていた。ルーキーの高い能力を、捕手として最大限に発揮させなくてはならない-。言葉の端々には、そんな責任感、覚悟が感じられた。

そういえば、“事件”のあった2日の試合も先発マウンドには隅田がいた。そしてロッテのレアードにチェンジアップを読まれるように先制2ランを許した。中継ぎ陣も崩れ、打線も援護できなかった。勝たすことができなかった。

心は難しい。うまくいかなかった時の悔しさ、かなわなかった時の己のふがいなさ。そんな感情は、ぐっと強く押し寄せてくる。そこに懸ける思いが強ければ、強いほど。【西武担当=上田悠太】