87年前の2月5日、日本にプロ野球が誕生した。NPBの前身「全日本職業野球連盟」が結成され、巨人など7球団が加盟してスタート。文字通り、プロ野球の「誕生日」となった。

その2年後。ホークスは産声を上げた。今季は球団創設85周年のメモリアルイヤー。93年に福岡に誕生したドーム球場の開場30周年も重なり、ダブルメモリアルのめでたいシーズンである。オフに大型補強し、3年ぶりV奪回は最重要課題。いや、優勝は必須条件だ。王球団会長は「10ゲーム差をつけてのV」を希望し、孫オーナーも3年連続の「敗者」ではプライドが許すはずがない。

宮崎キャンプ第1クール最終日のこの日、A組のグラウンドには活気があった。今季、先発ローテ入りが期待される左腕大関は打撃投手で順調な仕上がりをアピール。「ロマン砲」のリチャードも笠谷から豪快にバックスクリーン弾を放った。クールが進むにつれ「競争」は激化するだろう。チーム力の底上げには、常に変化を求めるチーム内の競争激化が最も重要だ。

B組のグラウンドでは生まれ変わろうとしている男がいた。3年目の井上朋也内野手(20)だ。20年ドラフト1位で入団した右のスラッガーは、大幅な打撃改造に着手。右肘が張り、トップの位置で右肘が右腰の裏に隠れるようになっていたフォームを根本から矯正することになった。「3年で筋量は増えているのに、ヘッドスピードは落ちている。きちんと数字も示して本人に(打撃改造を)納得してもらった」。小久保2軍監督は厳しい表情で話した。午後5時すぎ。室内練習場では村上2軍打撃コーチとバットの位置を確認しながら、白球を打つ井上の姿があった。「(フォーム改造は)本当に怖いです。これから自分の打撃がどうなるかわからないですが、自分が変化していかないといけないと思っています」。井上は不安を口にしながらも、変身の春に希望を見いだそうとしていた。野球人生を左右するかもしれない大改造。「競争」の輪に加わるまで、試練の日々は覚悟している。【ソフトバンク担当 佐竹英治】