カメラマンがファインダー越しに心を揺さぶられた場面を撮影した珠玉の1枚で、野球界のこの1年を振り返る新企画「写真の力」。全6回の最終回です。

■カメラマン・狩俣裕三

23年10月1日、巨人-ヤクルト戦。巨人松田宣浩内野手(40)の引退試合だった。5回裏、現役最後の打席は、残念ながら左飛に終わった。結果、巨人1軍での代名詞「熱男」ポーズを披露することは、ついにかなわなかった。

ファンからの大きな拍手が東京ドームに響き渡り、名残を惜しむ余韻が残る中、次のバッター岸田行倫捕手(27)がやってくれた。ヤクルト山野の初球フォークをフルスイングし、左翼席に放り込んだ。球場の空気は一変した。歓声を浴びながら生還すると、ベンチ前で松田らとハイタッチを開始。撮影しながら「必ずやる」と信じた通り、右翼席に向け、岸田は高々と右拳を突き上げ、叫んだ。

その後方で、うれしそうに「熱男~」と叫ぶ本家をとらえた。「先輩、後は任せて下さい」という思いと「後輩たち、後は頼んだぞ」という思い。熱く1枚で納めることができて良かった。


■カメラマン・菅敏

今年のエンゼルスベンチで定番だったのが、ご存じ「かぶとセレブレーション」。本塁打を打った選手がかぶとをかぶり、ナインに迎えられたあと、ブルペンに向かって手刀ポーズで締めくくります。

5月24日、本拠地でのレッドソックス戦。12号ソロを放った大谷翔平投手(29)は、かぶったかぶとを突然サンドバル投手にかぶせ、カメラを構えるように「指フレーム」のポーズを決めました!ベンチもこのパフォーマンスに大爆笑です。

通常、投手は本塁打後のパフォーマンスとは無縁です。一度はかぶとをかぶってみたかった投手たちの気持ちを、二刀流だからこそ気遣える大谷がとった行動に、ベンチも温かい気持ちになったに違いありません。いつも大谷の行動は予想外だらけで慌てますが、目の前のサンドバルにとっさにとったこの行動と発想のセンスには、とても感銘しました。それを写真に残せたことが、最高に幸せです!