7日から13日まで春季東北大会の取材で福島に出張した。大会は地元の聖光学院が4年ぶり4度目の春の東北王者に輝いた。
【7日】
まずは築地の会社へ。前日から始まった全日本大学野球選手権をテレビ観戦しながら速報。第2試合が終わったところで同僚に引き継ぎ、東京駅へ。新幹線で郡山に向かった。
座席に座ると小袋にあった「トランヴェール」という雑誌が目に入った。6月号の特集は「高校野球と宮沢賢治の青春」。金足農(秋田)、花巻東(岩手)、八戸学院光星(青森)の3校の紹介、岩手出身の宮沢賢治と高校野球との関わりなど。読んでいたらアッという間に郡山に到着した。
郡山を訪れるのは3度目か。最初はプロ野球の取材。2度目が高校野球の福島大会。聖光学院の歳内投手を見に行った。
ホテルにチェックインしてまずはNHKドラマ「ひまわり」の再放送を見る。このドラマもいずれ福島が舞台に移る。見終わったら買い出しだ。福島と言えば「日本酒」。駅に戻って地酒売り場へ。有名な「飛露喜」や「写楽」は置いてなかったが「廣戸川」の純米(4合瓶)を購入した。肴はスーパーで福島産ひらめのにぎり寿司(3貫)と水ナスの漬物を購入。さらにホテル裏の「和泉屋」というお肉屋さんが気になっていたので店内へ。わらじのようなメンチカツにも心ひかれたが、煮込み(278円だったか?)があったのでテイクアウト。おばちゃんがおまけにかき揚げを付けてくれた。この煮込みが絶品だった。メンチカツも買えばよかったと後悔。日本酒はもちろんおいしかった。
【8日】
雨で開始が遅れたが何とかプレーボール。第1試合は東北(宮城)が光南(福島)にコールド勝ち。そして第2試合。プロ注目の最速149キロ右腕、酒田南(山形)田村朋輝投手が6回からリリーフで登板した。先頭バッターを145キロ直球で見逃し三振。この回は3人で抑えた。しかし7回、連続三振を奪った2死走者なしから秋田商打線につかまった。四球の後3連打で2失点。続く8回もこの日、最速の147キロ直球を二塁打されるなど2失点。4回で8三振を奪ったが5安打4失点。酒田南は初戦で姿を消した。田村投手は手足長くスラッとした体型。まだまだ体が細く発展途上と見た。今はまだ「速い球を投げますよ」と一生懸命投げている印象も受けた。7~8の力で10のボールを投げられるようになれば…。伸びしろはある。今後に期待。
第3試合が始まると雨脚がやや強くなった。青森山田が3本の本塁打で明桜に4-0とリード。しかし4回途中、ついに中断。結局、天気は回復せず午後5時54分、降雨ノーゲームが宣告された。今年は甲子園のセンバツ大会から「継続試合」が試験的に採用された。ただ東北大会では「継続試合」は採用しておらずノーゲーム。青森山田の放った3本の本塁打は「幻」となった。
取材を終えて速報を書いて仕事終了。福島に移動しなければならない。球場前からバスに乗って福島駅へ。駅に着いて料金を「PASMO(パスモ)」で払おうとしたが「使えません」という。ポケットの小銭を探したが100円しかない。1000円札もなし。運転手さんに伝えると「そこのコンビニで何か買って両替して来てください」とのこと。コンビニに駆け込み缶ビールを1本買って1万円札を崩して運転手さんに渡した。やれやれ。駅のスーパーで値下げが始まった弁当を購入。新幹線に飛び乗って福島へ向かった。郡山-福島は時間にして10分ちょっと。あわてて弁当をコンビニで買ったビールで流し込むとあっと言う間に福島到着。新幹線を降りると聴き慣れたメロディーが。福島市出身の作曲家・古関裕而さんがつくった「栄冠は君に輝く」が迎えてくれた。
【9日】
タクシーで県営あづま球場へ。この球場は2度目。最初はやはりプロ野球の取材で。福本豊選手がホームランを打ったことを覚えている。もう30年以上も前のことだ。
第1試合は仙台育英-弘前学院聖愛。試合は6-6で延長戦へ。11回表、聖愛が1点を勝ち越し7-6で仙台育英を破った。敗れはしたが仙台育英の豊富な投手陣が印象に残った。4投手が登板。先発の左腕・古川翼(3年)は142キロ、2番手の鈴木晶太(3年)が139キロ、3番手の高橋煌稀(2年)が139キロ、そして最後に投げた2年生左腕の仁田陽翔が145キロをマーク。仁田は鋭いスライダーも持ち敗戦投手になったものの4回で7奪三振。イメージは楽天の松井裕樹か。来年のドラフト候補になるのは間違いない。
第2試合は佐々木麟太郎の花巻東-東北。花巻東が3回に1点を先制したが6回に逆転を許す。8回にも1点を追加され1-3で初戦敗退となった。佐々木は4打数無安打1三振。6回1死三塁で迎えた第3打席で空振り三振に倒れ試合後は「実力不足。ゼロからやり直したい」と悔しそうに何度も繰り返した。高校通算本塁打は69本で足踏み。この敗戦を糧にもうひと回り大きくなってほしいものだ。
【10日】
あづま球場で2試合が行われたが、球場には行けずホテルにこもってテレワーク。築地の社内の人員が足らず大谷翔平投手の速報をテレワークせよという指令。狭い部屋での作業はストレスがたまったが大谷は自ら逆転本塁打を放って4勝目。テレワークが報われました。
【11日】
東北大会は休養日。ということで連日のテレワーク。大谷と大学選手権のスコア速報。現地休暇でも取って飯坂温泉にでも出掛けたいところだったが我慢、我慢。
【12日】
東北大会は準決勝2試合。午前10時開始だと思い同8時に球場に到着したら何か様子がおかしい。聞けば試合開始が12時半に変更になったという。「いつ決まったんですか」と聞くと前日夕方だという。スマホをチェックすると同僚のY記者から開始時間変更のメッセージが入っていた。うっかり見落としていた。
記者席で落胆していると激しい雨が降り出した。とても12時半には始められそうにない。それでも大会本部は「ナイターになってもやりきる」と言う。執念が実ったか、第1試合の聖光学院-弘前学院聖愛は午後2時21分にプレーボール。ところがこの試合が延長戦にもつれこむ大熱戦。延長12回、聖光学院が5-3で勝利した。
第2試合は東北-青森山田。東北が先発のハッブス大起投手(2年)からエース伊藤千浩投手(3年)の継投で3-1で逃げ切った。試合が終わったのが8時28分。残念ながら毎週楽しみにしているNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は見られず。真っ暗な左翼上空にはお月さまがきれいに輝いていた。
【13日】
いよいよ決勝戦。硬式の決勝に先立って午前9時から軟式の決勝(専大北上-能代)が行われるということで、8時半に球場到着。せっかくなので軟式決勝も速報してみることに。実は入社して30数年経つが軟式野球を見るのは、1年目に萩本欽一さんが力を入れていた高校生の定時制通信制軟式大会以来。試合前に大会本部にお願いして軟式の試合球を見せてもらった。硬式のボールと並べて写真を撮らせてもらいプレーボール。両校とも体格は硬式の選手とさほど変わらない。投手の球速は130キロ前後。専大北上が5-1で勝ち12年ぶりの優勝を果たした。
硬式の決勝、聖光学院-東北は午後1時から。球場の売店で焼きそば(400円)を買って腹ごしらえ。試合は6回を終わって3-0で東北がリード。しかし7回、聖光学院が打者一巡の猛攻で4点を奪って逆転勝ち。4年ぶり4度目の優勝を決めた。
聖光学院は3試合連続の逆転勝ちで春の東北王者に輝いた。試合後斎藤智也監督は今年のチームをこう評した。
「弱いんだけど、去年の秋からちょとずつ強くなってきた。ピンチでの守り、ここぞの1本。粘り強さ。歴代の中でもこれらを身に付けているチーム」
今大会は安定感抜群のエース・佐山未來投手(3年)を4試合のうち3試合でリリーフ起用した(2回戦の秋田商戦は先発完投)。他の投手に経験を積ませる意味合いもあるだろうが、夏の甲子園はある意味消耗戦。いかにエースを大事に使うか。優勝を目指すなら余力を残して最後の決勝戦へ臨みたい。もちろん「1週間500球以内」の球数制限もある。斎藤監督は甲子園も想定しての、エース起用法だったに違いない。
それにしても東北大会のレベルは予想以上に高かった。決勝進出の聖光学院、東北はもちろん、弘前学院聖愛、青森山田、秋田商も印象に残った。140キロ台をマークする投手が多く、打撃も下位打者でも本塁打を放つなど力強かった。初戦敗退したが花巻東、選手層の厚い仙台育英も夏に向けて巻き返しをはかってくるだろう。今夏もセンバツ優勝の大阪桐蔭、春の近畿大会で大阪桐蔭を破った智弁和歌山など近畿勢の壁は厚そうだが、悲願の全国制覇へ、東北勢の健闘を祈りたい。【デジタル編集部 福田豊】