金本阪神は年が明けると3年目を迎える。目指すはペナント制覇であり、日本一。同監督、早くも来季のスローガンを掲げた。

 「執念 タイガースチェンジ2018」

 どんなに苦しいゲーム展開になろうとも、最後まで絶対に勝負を諦めてはならないことが大事な世界。金本監督自身の「集中して、絶対に何とかするんだ。という気持ちのあった時の方が結果は良かった」という体験から、気持ちの持ち方重要視のスローガンを打ち出した。

 選手から精神面の成長を感じ取ったのだろう。「勝ちに対する執念。打席での執念。マウンド上での執念。守っているときの執念。これを前面に出して来年、優勝できるように戦っていきたい」とメンタル面を強調したのは勝負事には欠かせない大事なものであるからだ。私もよく用いた。あの星野仙一氏の阪神監督時代の選手ミーティングである。「いいか。よく聞けよ。野球は勝負事なんや。だから“優勝したい”とか“打ちたい”とか“いいピッチングをしたい”なんていう甘い考えでの勝負では絶対勝てっこない。考え方を“優勝するんだ”“絶対打ってやる”“絶対牛耳ってやる”という強い気概を持ってプレーをしないと優勝なんてできへん」と語っていたことを。怖い顔だった。大きな声だった。語気を強くしての叱咤(しった)激励だった。そして、広島から金本(現監督)を補強するなど、あくる年にはリーグ優勝を現実のものとした。気持ちの持ち方がいかに勝負を左右するかを説明した。

 問題は戦力だが外国人を含めてまだ補強は終わっていない。現時点ではペナントレースを検討する段階ではないが、今季の戦いぶりから若手が成長しているのは間違いない。成績も昨年の4位(64勝76敗3分け)から、今シーズンは2位(78勝61敗4分け)と浮上。チーム力が着実にアップした証しだが、金本監督は納得していない。「2位は敗者。優勝してこそ勝者」と厳しくチームを見つめている。望まれる戦力アップは、今年も高知・安芸で11月2日から19日まで若手中心の秋季キャンプを張った。心、技、体の向上、監督流のかなり厳しい練習となったが、選手は前向きに体当たり。狙いどおり技術の向上のみならず、体力の強化もあわせて進歩を遂げた。

 秋季キャンプの成果。監督の目にはどう写ったか。「成果はありましたよ。時間もかけてかなり厳しい練習をしてきましたが、みんな頑張ってよくついてきてくれました。昨年と比較してみて気がついたのは、去年の練習中は疲れから選手同士であまりしゃべったりすることはありませんでした。ところが今年は練習でも結構選手間で言葉を交わしていましたし、練習しているときに話ができるということは、体が強くなった証しだと思います。体力がついて肉体的にも余裕があるからできることで、そういう意味で頼もしくなったと思いますよ」と秋季キャンプを振り返ってくれた。

 強い体。スポーツの世界では何事にもまさる好材料だ。これまでプロ野球界で数多くの選手を見てきたが、デビューしたばかりの若手はまだ本物の力がついていない。短期間であるなら自分の力以上の活躍をすることはあるが、長続きはしない。その点、鍛えて、鍛えて、鍛え抜いた強靱(きょうじん)な体の持ち主は、1シーズン、コンスタントに活躍できるだけの力を身に付けている。私が阪神のフロントに復帰した当時のスター選手、掛布しかり、真弓しかり、岡田の体の強さは半端でなかった。ケガのしにくい体。ケガに強い体。ランニング、バッティング、フィールディング。何をやらせても弱音を吐くことはなかった。中谷であり、高山であり、大山よ。大先輩に追い付き追い越せ。阪神、来シーズンの飛躍のカギはこの3選手が握っているとみた。

 11月25日、大阪はホテル阪神で行われたOB会の懇親会には金本監督も出席してくれた。監督にオフはない。補強等すでに来季に向けてスタートしている。あいさつでの「来シーズンこそは、皆さんの期待に応えられるように頑張ります」の“来シーズンこそ”の言葉にかなり熱がこもっていたのが印象に残ったOBです。やはり期待したいね。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)