いよいよ、だ。阪神がマジックを1にして、岡田彰布が宙に舞う。
ここからは「優勝」と書いてもよくなる。18年ぶりの優勝を決めれば、スポーツ紙の1面から最終面まで、タイガースの記事であふれる。そこで今回は何を書くか。ファンの間で、すでにささやかれている「MVPは誰だ?」を推理する。
長い歴史で、まず優勝チーム以外からMVPが選出されたのは、セ・リーグで3度ある。古くは1964年。阪神が優勝したシーズンだったが、超人的な打撃で球界を席巻した巨人・王貞治が選ばれた。王は1974年も優勝チーム以外から選ばれている。
2013年はヤクルトのバレンティンだった。本塁打の日本記録を塗り替える60本。強烈なインパクトで、さすがに優勝チームからは対抗することもできなかった。
過去3度しかないVチーム以外からの選出。果たして今シーズンは? と見渡したが、突出した数字を残した選手はいなかった。ということで、MVPは阪神から。さて候補は、というと、これが数多くいる。
あくまで記者投票によるものだが、ファンの間で名前が挙がるのが野手で大山、近本、中野といったところ。投手では村上、大竹、そして岩崎。彼らが有力候補になっているが、これはなかなかの混戦になる。
中には「ブルペン全体にMVPを」とか「岡田彰布こそMVP」といった声も聴かれたが、はてさて記者は誰に投票するのか。今回は本当に興味深い。
阪神は過去5度、リーグ制覇を果たしている。王貞治が選ばれた1964年を除く4度。1962年は大エース、村山実が文句なしに選出され、1985年の日本一シーズンはR・バース。掛布、岡田、真弓とライバルはいたが、3冠王に輝いたのだから、これも文句なしだった。
2003年は誰だった? 星野仙一が信頼し、エースとして投げまくった井川慶が順当に選ばれ、2005年は監督の岡田が「4番」に据えた金本知憲が、他を寄せ付けずの選出。これらを振り返ると、それぞれがすごい成績、数字を残して、投票する記者も迷いがなかっただろう。
ところが今シーズン、様相は違う。成績や数字で、飛び抜けたものを残す選手がいない。だから「該当者なし」にはならない。誰かが選ばれるのだが、正直、決め手に欠けるから厄介だ。
井川や金本のような存在がいない分、この優勝はチームとして勝ち取ったものということがわかる。数字的には突き抜けていないけど、選手がそれぞれの役割を果たしたから、優勝に結びついたわけ。その中で一体、だれがMVPに選ばれるのか。
周囲の阪神ファンに聞いてみたところ、最も支持されたのが大山だった。「軸として、4番を打ち続けた」「ここぞの場面での存在感」。手を抜かぬ姿勢も加味され、評価は高かった。
続くのが近本。終盤に死球禍に見舞われながら、復帰してからも不動の1番打者としてチームを引っ張った。それは数字以上の評価であり、そこに盗塁王のタイトルが加われば、選出の可能性は十分にある。
そこで自分が選ぶ本命なのだが、あえて村上を推す。何が推しの理由かといえば、実質的なデビューとなったシーズン初めの巨人戦。7回を「完全」に抑え、そこで降板というインパクトある投球は、チームを間違いなく勢いつかせた。そこからローテーションに組み込まれ、いまでは週初めの頭を任せられる投手になった。
防御率のタイトルがかかっているし、新人王の有資格者でもある。大竹や岩崎も候補であるけど、彗星(すいせい)のごとく現れた村上には、本当に驚きしかなかった。
MVPは誰だ? こんなことを考える。これも優勝するから。みなさんの推しは誰でしょうか。【内匠宏幸】
(敬称略)




