<イースタンリーグ:日本ハム4-10巨人>◇1日◇鎌ケ谷

捕手として通算出場試合1527、コーチとして4球団で計21年間(うち1年間は編成担当)の田村藤夫氏(61)が、2年ぶりの2軍戦出場となった日本ハム・中田翔内野手(32)の現状と、結果が求められている3年目・吉田輝星投手(20)のピッチングに目を凝らした。

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先入観で試合を見てはいけないと感じた。私はてっきり中田は調整の意味合いで、実戦感覚を戻すぐらいかなと思っていた。

それが打席では鋭い振りで内野ゴロを打つと、当然と言えばそれまでだが一塁へ全力疾走。守備では一塁フライに大きな声を出し、一塁ゴロに反応よくダッシュして二塁に送球するなど、足は動いている、声は出ており、中田ははつらつとしていた。

第1打席は巨人先発左腕山本に対しカウント0-1で、外から中に入ってくるカーブを打って三塁線への強いゴロ。第2打席もカウント0-1から外よりのまっすぐか、ツーシームかのストレート系を打ってショートゴロ。真芯ではないが、いい感じのスイングだった。第3打席は四球。第4打席は左腕高木のやはりカウント0-1から外よりのチェンジアップを左前に運んだ。4打席で3打数1安打。内容は悪くなかった。

私の感覚的な感想からすれば、中田のスイングにはまだ若干のずれが感じられる。例えば第1打席のカーブに対してわずかに体が泳いでいる。スイングはシャープで中田らしい力強さがあるが、ほんの少しポイントが前に来たことでサードゴロになった。いい時の中田ならば左前打か、左翼に運んでいてもおかしくないボールだった。同様に第2打席も本来の中田のスイングならば左中間へ長打が期待できた。

そもそも1軍での不振の原因がはっきりしない。バッティングでのメカニックの問題なのか、コンディションによるものなのか、もしくはメンタルに不安があるのか、それははっきりしない。この日の動きを見ている限り、明らかなコンディション不良という印象は受けなかった。実戦から離れているからこそのバッティングのずれはあるが、これは打席を重ねていけば自然と解消できると感じた。

中田のスランプの要因がはっきりしないという疑問が残る一方で、先発吉田のピッチングにも釈然としない不可解さがあった。

初回は全球ストレートに映った。もしかするとカットボールがあったかもしれないが、あったとしてもツーシームか、カットボールだろう。それで5安打で5点を失った。初回の最速は142キロ。吉田と言えば145~146キロの真っすぐにキレがあり、手元でピュッと伸びる球質が身上のピッチャーだ。それが142キロでキレもない。それでいてどういうわけか全球ストレート、もしくはストレート系で安打を重ねられては不思議というか、不可解とも映った。

どういう意図があるのか、考えてみたが私には思い付かなかった。もしかすれば首脳陣からの指示があったのかもしれない。

詳しい背景がわからないのはもどかしいが、試合を見たものとしての見解はこうだ。オープン戦にチームのエース格が、今年の真っすぐがどのくらいかを試すというのはよくある。ただ、今は6月だ。そしてファームといえども公式戦だ。吉田は1軍昇格を目指す立場で、結果を求められる。その立ち位置を理解していれば、この日のストレートで初回を5安打5失点では、誰も納得しないだろう。

2回以降はカーブもフォークもスライダーも織り交ぜていた。ならば、どうして初回の途中から変化球を交えて投げないのか。これでは何も得るものがない。私はスタンドから見ていて率直にそう感じた。

本来なら4番でチームを引っ張る中田が交流戦の真っただ中でファームにいて、生きのいいピッチングで先発陣に食い込むべき吉田がキレのないストレートで炎上している。蛇足になるが、清宮はDHで2三振など4打数無安打。

本来なら、清宮が一塁で、久しぶりに実戦復帰の中田をDHにと、逆になるべきところだ。実戦の感覚を取り戻すために中田を一塁につかせたという事情もあっただろうが、何より中田の目の前で4打席も回ってきて、清宮に1本も出ないのはさみしい。1軍が苦しんでいる時、ファームもこの様子ではなかなか明るい兆しとは言えない。中田はこれから調子を上げていくことが予想されるが、本来は1軍で活躍していて当然の戦力。さらに下から突き上げる若い力の躍動が感じられないことが、何とももどかしい。(日刊スポーツ評論家)

イースタン・リーグ 日本ハム対巨人 1回表、一塁守備に就く日本ハム中田。手前は吉田輝(撮影・木下大輔)
イースタン・リーグ 日本ハム対巨人 1回表、一塁守備に就く日本ハム中田。手前は吉田輝(撮影・木下大輔)