1次ラウンドA組の戦いを見た田村藤夫氏(63)が、イタリアチームを分析する。

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まず、イタリアという国名から受ける印象を外して試合に臨むべきだ。イタリアチームは普通に強い。メジャー経験者がメンバーにいるのはもちろんのこと、プレーを見てもチームがしっかりしていることが十分にわかる。

NPBレベルのチームと試合をする緊張感が必要になる。例えば、二塁のマストロボニの動きを見ても、基本を身につけているのがわかる。バウンドが難しい打球に対して、瞬時に下がっての半身から、二塁ベースカバーに入った遊撃にトスをして、難なく併殺を完成させている。

何げないプレーだが、「イタリアはうまいな」という感覚で見ていると危険だ。外野でも右翼Do・フレッチャーの打球反応は言うことない。打球に対して背走しながら最短距離を取り、最後はグラブの右手を目いっぱいに伸ばして確実にキャッチしている。もう、メジャーリーグと遜色ない守りの堅さと言える。

バックアップもベースカバーの動きも、すべてが基本に忠実で、チーム全体としてしっかり連動して統率が取れている。「イタリアはうまい」という認識ではなく、メジャー経験者をそろえた強いチームだという意識で臨まないと、どこかにスキが生まれてしまう。

打撃も強力な印象を受けた。個々の打者の細かい特色まではスカウティングできていないが、キューバ戦では中日のR・マルティネスからタイブレークで得点した。昨季、R・マルティネスは中日で56試合に登板し、失点はわずか6。防御率0・97だった。その絶対的なクローザーから、イタリアは2点を奪って試合を決めた。勝負がかかった局面での決定力は、ポテンシャルの証明だ。

もちろん、侍ジャパンはしっかりイタリアをスカウティングして試合に臨むはずだが、序盤の展開で手堅い守備を見せられて、試合運びが守りに入らないように、“手ごわいチーム”との認識を全体で共有してもらいたい。(日刊スポーツ評論家)