「突然変異」と言えば失礼だし、やはり「成長」か。1番・近本光司が今季得意とする「左腕からの1発」で試合を優位に導いた。近本が持ち前の振り切るスイングで一発を放つとムードが変わる。

1点リードの3回、先頭打者でDeNA浜口遥大から8号ソロを中堅に放り込んだ。これで流れが一気に阪神が傾く。その8号、少し不思議な気もするのが左右投手の内訳だ。これが左腕からの6本目となった。

今季8本のうちの6本だからなかなかの確率だ。8本塁打の投手はこんな感じ。○が阪神勝ち●が負け。

1号 4月4日○=中日小笠原慎之介(左)

2号 同21日●=巨人畠世周

3号 5月19日○=ヤクルト田口麗斗(左)

4号 6月10日○=日本ハム宮西尚生(左)

5号 同13日○=楽天早川隆久(左)

6号 7月14日●=DeNA今永昇太(左)

7号 8月15日○=広島大道温貴

そして8号がこの日の浜口だった。

打率は対右腕が3割2分2厘、対左腕が2割5分4厘なので余計に左腕からの本塁打が目立つ。「ずっとそうだったかな?」と過去2年を確認すると違う。1年目の19年は9本で左腕からは3本。昨季20年はこれも9本のうち左腕は1本だけ。左腕の方が1発が出るのは今季の特徴である。

さらに近本が本塁打した8試合で阪神は6勝2敗と分がいいが、そのうち左腕から打った試合は5勝1敗とさらに勝率が上がる。「左対左」の方が体が開かないなどと基本理論はあるだろうが、要するにプロに慣れてきた証明かもしれない。今季こそ過去2年で届かなかった2桁本塁打をマークしてほしいところだ。

「小力はもともと持っているんで。チカは塁に出るというのが一番相手にプレッシャーをかけられる。でもときにはこうやって試合を決めるような長打を打てる可能性も持っている。打てるなら本塁打も打っていけばいい」

指揮官・矢野燿大も頼もしい1番打者にそんな期待をかけた。塁に出ればしつこく、焦って勝負に出ればガツンとかまさせるのは相手バッテリーにとってこれほどイヤな1番打者もないだろう。京セラドーム大阪ではこれが全球場最多の3本目にもなった。ここは近本の活躍で一気にスイープといきたい。(敬称略)