「いや~、ホント今日は理想的なホームランでしたね~」。自分に厳しい性格? のソフトバンク上林誠知外野手が珍しく声をはずませていた。18日の紅白戦。ソフトバンクが春季キャンプを張る宮崎市のアイビースタジアム(両翼100メートル、中堅122メートル)で右中間最深部に突き刺さる「第1号」は本人が納得する「力任せじゃない、ライナーで入ったホームラン」だった。

 「軽く打ったように見えましたが、打球が失速しませんでしたね」と率直に伝えると「そう言われるのが1番うれしいんですよ!」とニカッ~と笑顔になった。試合後は藤本博史打撃コーチの球出しで、ロングティーを延々と繰り返した。「インパクトの瞬間だけ力を入れればいいんです」。そこでも悠々とスタンドインを見せた。午後5時過ぎ。誰もいなくなったグラウンドに一礼し、練習を終了させた。

ロングティーのあと、藤本コーチと入念にインパクトを確認する上林
ロングティーのあと、藤本コーチと入念にインパクトを確認する上林

■筋トレ、嫌いです。キツイの苦手なんです

 上林は昨季134試合出場し、13本塁打を記録した。ストイックにトレーニングをするイメージがあり、さも筋トレにも余念がないのかと思いきや、開口一番こう言った。

「筋トレ、嫌いです」

「キツイの、苦手なんです」

 意外だった。ではなぜ、あんなに打球を遠くに飛ばせるのか? パワーの源は筋肉ではないのか? 仙台育英時代はフリー打撃で推定170メートルの打球も飛ばしたという逸話もある。

 「高校時代、筋トレはほとんどしませんでした。その代わり『綱登り』というトレーニングをやりました。室内練習場につるした綱(7メートル)を登って、降りる。それだけなんですが、難しい。腕の力だけでは登れないので、全身運動になっていいんですよ」。この綱登りを1日5往復、毎日やっていたという。

 ソフトバンクの作山和英担当スカウトに確認すると「そう、それだけなんだよ。信じられないでしょう?」と笑った。「アイツの質のいい筋肉は、ウエートで作られたんじゃないんです。綱登りと、野球の動きの中で作られた筋肉なので、とてもバランスがいいんです。柳田とは違う、ライナー性のホームランを打てるのは、彼のそういう身体能力がなせる業ですね」と教えてくれた。

 もちろん、資質に恵まれたということもある。誰もが真似してそうなるわけではない。だからこそ「天性のホームランバッター」としての期待が止まらないのだ。

自分を飾らず、周りに流されない魅力を持つ上林
自分を飾らず、周りに流されない魅力を持つ上林

■「ジョグジーンズがあるから、大丈夫」

 現在、体重90キロ。太りにくい体質だったが、努力と工夫で「人生最重量になれた」と喜んでいる。それでも「打撃はパワーじゃない、バランスです」と強調する。ちなみに、もっと大きくしたい筋肉は「太モモ」だそうだ。今でも十分太いと感じるが、イメージしているのは、あと5センチ…、いや10センチプラスした太さだとか。そんなに太いとジーンズが履けなくなるのでは…と老婆心から聞いてみると「大丈夫なんです。(若者に人気のブランドで)ジョグジーンズっていうブランドがあって、太モモの部分が伸びるんですよ!」。オシャレも、筋肉もあきらめないということか。さすが。【樫本ゆき】