北海道栄が函館工を8-1の7回コールドで下した。背番号10の才木海翔投手(2年)が5安打12奪三振で完投。「ABC」(当たり前のことを、ばかにせず、ちゃんとやる!)を座右の銘にする右腕が、準優勝した15年以来2年ぶりの4強に導いた。

 北海道栄の右腕、才木が先発全員から12奪三振を奪う快投を演じた。最速143キロの直球が低めに次々に決まり、スライダーのキレも抜群。「甘いところは打たれてしまった」と5安打を反省するが、1失点にまとめた。「抑えるのが自分の役目。コースに投げきったのが結果的に三振につながった」と、2年ぶりの4強入りに貢献した。

 言葉に宿る力を信じた。小学時代、担任教諭から教わった「ABC」が座右の銘だ。A(当たり前のことを)B(ばかにせず)C(ちゃんとやる!)。ビジネス格言として用いられているが、野球少年の胸にも響いた。「小さいことから、やることをしっかりやる。それが野球につながって、いつか良いことがある」。道に落ちているゴミを見つけるとすぐに拾うなど、普段の生活から徹底している。

 その行いは言葉の通り、野球につながった。大阪から遠く白老町の同校に入学した。渡辺伸一監督(45)が兵庫県内で偶然に才木の練習風景を見たことからだった。約3600平方メートルの室内練習場など充実した設備、3学年合計で80人近くの仲間のいる環境に、「最高です」と感謝した。地元は大阪・豊中ローズ球場周辺で、甲子園球場まで約15キロ。Uターンでの聖地まであと2勝とした。

 帽子を飛ばしながらの熱投で、111球を投げきった。「(帽子が)飛んでいるのは前に体重が乗り切っていること」と好調の証し。地区含め5戦に登板し、21回1失点23奪三振の活躍だ。「1戦1戦、ちゃんと戦って、やることをやれば、結果はついてくる」。ABCの心得で37年ぶりのVを狙う。【西塚祐司】