第100回全国高校野球選手権記念青森大会(7月9日開幕、はるか夢球場ほか)の組み合わせ抽選会が26日、青森市内で行われた。青森は今春の県大会で初戦敗退に終わった八戸工大一が、7月11日の1回戦で三沢商と対戦。最速145キロを誇るエース右腕の向井龍介(3年)が巻き返し、8年ぶりの甲子園出場を狙う。

 第100回の青森の夏は、向井が主役になる。初戦が三沢商に決まり、最速145キロ右腕は意気込んだ。「この春はめちゃくちゃ悔しかった。今はリリースの瞬間だけ力を入れるように意識して、球質は上がった。この夏は自分が甲子園に導く」。春は力みすぎて打ち込まれ、三本木にまさかの初戦敗退。本来の姿を見せないまま、夏本番に向けて急ピッチで調整を続けている。

 剛腕の系譜を継ぐ男だ。同校のエースは伝統的に速球派が続いている。3学年上の内沢航大(現法大3年)から順に、種市篤暉(現ロッテ)、古屋敷匠真(現法大1年)と直近の先輩3人はいずれも最速140キロ以上をたたき出していた。向井は高校入学時の最速が125キロしかなかったが、高2秋で137キロまで上昇。「自分で140キロ以上の歴史を切らしちゃ駄目だと思った」と、この冬は努力を重ね、現在は145キロまで到達。向井の急成長の裏には「剛腕製造工場」の異名を持つ長谷川菊雄監督(41)の指導理念があった。

 長谷川監督 ウチはまず投手に球速を追い求めさせます。球速を出すための練習をすることで下半身も同時に強化され、制球力も一緒に上がっていきます。

 上半身は器具を使った筋トレを極力行わず、懸垂や階段ダッシュなどの自負荷トレが中心。右投手の場合、踏み出した左足の股関節に体重を乗せることを意識させて、投球フォームを固めるのが「長谷川式メソッド」だ。

 向井も177センチ、77キロの体を躍動させ、上手とスリークオーターの中間から右腕をしなやかに振り下ろす。最速152キロをマークした古屋敷と投げ方がそっくりだ。向井にとって小、中学の先輩でもあり「古屋敷2世」を襲名する。「甲子園に行けなかった(古屋敷)匠真さんの分まで頑張って、甲子園で長谷川監督を男にする」。先輩のため、恩師のため、自慢の右腕を振り続ける。【高橋洋平】