熱い男が、ウラガクに5年ぶりの歓喜を呼び込んだ。浦和学院(南埼玉)は決勝で17得点と打線が爆発。2回、蛭間拓哉主将(3年)が高校通算27号の3ランを放ち、県川口の勢いを止めた。森士監督(54)も「甲子園に出られない悔しさが乗り移ったような1発だった」とたたえた。

 しっかり軸足を残し、痛めている腰を切って飛ばした。打撃の型は巨人阿部と重なる。巨人OBでもある三浦貴コーチ(40)からは「阿部は変化球でも軸をまっすぐ残して打っているよ」とアドバイスを受けている。「最後にようやく力みが取れて打てました」と白い歯を見せて笑う姿も、巨人阿部と重なった。

 勝つまで油断しなかった。8回、蛭間は自ら10点目のホームを踏むと、ベンチ裏で中前祐也遊撃手(2年)を呼んだ。この日、攻守にさえない後輩に「雑になってるよ。夏は1球で決まるんだから」と声をかけた。中前は「シャッフルできた」と頭の切り替えに成功、2点適時打を放った。

 ベンチから、塁上から、センターから、ナインに声を飛ばす。怒らず、熱くアドバイスする。森監督も「最近の子にしては珍しいくらい」と蛭間のキャプテンシーを認める。個々の技量は全国トップ級の猛者集団。「まとめるの、本当に大変でした」と苦労を明かしたが、悲願の甲子園でそれも報われた。

 この日、埼玉・熊谷市で国内観測史上最高の41・1度を記録。決勝が行われたさいたま市内も相当な熱気だったが、蛭間は「今までで一番涼しいくらいでしたよ」とどこ吹く風。暑い埼玉の熱いキャプテンが、甲子園に熱さをもたらす。【金子真仁】

 ◆浦和学院 1978年(昭53)創立の私立校。生徒数2914人(女子1431人)。野球部創部は78年。部員数は96人。甲子園出場は春10度、夏は5年ぶり13度目。主なOBに鈴木健(元ヤクルト)大竹寛(巨人)ファッションモデルの菜々緒ら。所在地はさいたま市緑区代山172。石原正規校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦7-0東野

3回戦11-0志木

4回戦7-3朝霞西

準々決勝11-4朝霞

準決勝7-0聖望学園

決勝17-5県川口