全国大会初出場の札幌大谷(北海道)が10年ぶり5度目出場の国士舘(東京)を7-3で下し、4強に進出した。先発の196センチ左腕、阿部剣友(1年)が1回を無失点で抑えると、2回から172センチ右腕、増田大貴(1年)が7回2/3、3失点とロング救援。身長差24センチ、全国初体験の1年生「左・右腕」が勝利を呼び込んだ。今日12日の準決勝は、筑陽学園(九州・福岡)と決勝進出をかけて対戦する。

全道大会すら経験のない2人の1年生が、全国舞台で躍動した。まずは阿部だ。196センチの長身を生かしたダイナミックなフォームで神宮のスタンドをざわつかせながら、1回1安打無失点で乗り切った。2回から継投した増田は、120キロ後半の直球と100キロ前後の変化球で緩急をつけ、9回2死まで7安打3失点と踏ん張った。「同学年の阿部が注目されていたので、僕もいるんだというところを示したかった」と振り返った。

1回戦の龍谷大平安戦は西原健太、太田流星(2年)と、全道を勝ち抜いた万全のリレーで勝利した。この日の阿部と増田は、公式戦登板は札幌地区予選のみ。大胆な抜てきが当たった船尾隆広監督(47)は「阿部は、なかなかない角度から投げるので目線を変えられる。増田は最初は顔が青ざめていたので腕を振れと伝えたら良くなった。今まで見たことがないような投球」と喜んだ。阿部は最速134キロをマーク。増田は、これまで公式戦は最長3イニングまでしか投げたことがなく、神宮のマウンドで限界を突破した。

「世界一の目」がさえた。船尾監督はNTT北海道時代、携帯電話の営業所に派遣するスタッフの配置を管理する役目を担っていた。「誰をどう配したらうまく回るかとか人を見る感覚を養えた部分もある」と言う。増田は3日の百合丘との練習試合で4回1安打無失点、阿部は創価との練習試合の6回2死一、三塁のピンチで登板し、打者1人を三振に切った。野球で97年に世界一、業務でも多くの人材を見てきた指揮官は、2人のマウンドでの所作や雰囲気から察し、大舞台でもいけると送り出した。

道勢6年ぶりの神宮2勝。船尾監督は「出場10チームで一番弱いと思って出ているので、次も当たって砕けろです」と謙虚に口にした。近畿、東京の難敵を連破した力は本物だ。勢いに乗った札幌大谷が、さらなる高みを目指す。【永野高輔】