<高校野球大阪大会:東大阪大柏原2-0信太>◇16日◇2回戦◇花園中央公園野球場

「悔いはない」。信太(大阪)の谷口晟哉投手(3年)は目を赤くしながらも、晴れやかな表情だった。「今日の試合は自分の実力以上のものを出すことができた」。東大阪大柏原に敗れたはしたが、試練を乗り越えてエースの座をつかんだ男のプライドだった。

チーム事情で昨年まで投手をできず、念願のマウンドに立ったのは春先だった。しかし、結果を残せず春の府大会後、外野手に回った。「正直腐りかけていました」。力を発揮できない自分に腹がたった。

父満秀さん(48)は、あえて遠くから見守った。満秀さんも元高校球児。大阪電通大高3年時の1988年(昭63)、昭和最後の夏に大阪大会2回戦で敗退した。「自分が昭和最後で、息子が令和最初に出るなんて運命的なこと」。30年以上前、自分にもあった高校最後の夏。この日の朝は「頑張れ」と一言だけメールを送り、客席で声を枯らした。

紆余曲折を経てマウンドに戻ってきた谷口の帽子のつばには「不動心」と大きく書かれていた。ピンチになるたびに文字を見つめて心を落ち着かせた。「投手をやりたい」。うまくいかなくてもあきらめずにつらぬいた「不動心」は今後の人生の糧になるはずだ。【山崎健太】