高校野球はセンバツだけでなく、春季大会も全国で中止となりました。夏の大会もどうなるか、先行きは見通せません。このような状況にあっても、今、できることに励む球児たちがいます。津々浦々の取り組みを「高校野球NOW」と題し、随時紹介していきます。第1回は「3密」を避け、野球ノートをLINE(ライン)に替えた美里工(沖縄)です。

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美里工は野球ノートにSNSを活用し、選手の心をひとつにしている。新型コロナ感染拡大により、学校が休校となり野球部も活動を自粛中だ。その間、神谷嘉宗監督(64)は選手たちへ「3密(回避)を守り、屋外で2メートルの間隔をもってトレーニングする」という条件付きで自主練習の課題を与えた。

主に体力を落とさないためのメニューが中心。選手たちは、日々の活動内容をグループLINEに写真とともに「野球ノート」としてアップし、チーム全員でチェックする。神谷監督は「お互いの動向を共有することで、離れていても同じ目標に向かって進む意識が生まれている」と話す。いい取り組みには神谷監督から「GOOD!」など、褒めるスタンプが送信され、選手たちの励みにもなっている。

神谷監督からの指示は、トレーニング以外にも「家の手伝いをする」と生活面にも及ぶ。保護者の負担が増える、この時期だからできること。「お父さんとお墓の掃除をしました」「おじいちゃんと田んぼの草抜きをしました」といろいろな経験を通し、選手は「家族の大変さがわかった」など「心の成長」も感じられるようになった。

神谷監督はこれまで、中部商、浦添商(甲子園4強)、美里工と、赴任した公立校を強豪に育てた名監督だ。「日々、目標を見失わずに取り組むことで、コロナはいつの間にか終わっていた…そんな方向にもっていきたい」と前を向く。「今だからできること」と向き合い、選手たちは心身ともに成長している。【保坂淑子】

◆神谷嘉宗(かみや・よしむね)1955年(昭30)6月19日生まれ、沖縄県出身。読谷ではバレーボール部に所属し、全国大会出場。琉球大卒。都城東、八重山、前原、中部商、浦添商で監督を務め、11年から美里工へ赴任。野球部長を経て12年から監督を務める。08年夏、浦添商で甲子園ベスト4。14年、美里工をセンバツ初出場に導く。保健体育教諭。