岩手では監督が祖父、エースが孫の釜石商工が盛岡一と対戦した。

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「祖父孫鷹」の3年間が終わった。8回裏に盛岡一に2点が入った瞬間、コールドが成立。釜石商工の山崎蓮投手(3年)は、放心状態のままあいさつの列に並んだ。エースで1番の大黒柱。打では2安打を放った。投げても昨秋県8強の強豪に真っ向勝負を挑んだ。「こういう終わり方だったんですけど、全力を出せた」と悔いはなかった。

監督はおじいちゃんだ。祖父の山崎善輝監督(70)は「成長したし、球質もよくなった。ボール自体は悪くなかったけど勝負球が甘かった。ずっとその部分をうるさく言ってきたんですけどね」と最後まで指導者の顔だった。「おじいちゃんだから、孫だからと見られたらお互い嫌でしょう。孫からしたら厳しかったと思いますよ」と振り返る。69年に母校釜石工(09年に釜石商と統合し釜石商工に)の監督に就任。09年を最後に1度は引退し、11年には日本高野連から功労者賞も受賞した。しかし蓮の入学と同時に5度目の監督に就任。素質を認めるからこそ、同居する家に帰っても小言は続いた。「自分でもわかっているだけに、何回も言われるとイラッとしちゃって」という孫とは、何度も衝突してきた。

今大会を最後に勇退し、伊藤久起部長(32)に監督を引き継ぐ。「今日はご苦労さんでしょうね。最後は負けましたけど、絶対プラスにしていかないといけない」と孫にエールを送った。蓮は最後に言った。「辞めるのは知っていたので、監督のためにも勝ちたいと思ってやってきた。3年間いろいろあったけど、感謝の気持ちだけは伝えたい」。【野上伸悟】