茨城は元広島投手の紀藤真琴監督(55)率いる水戸啓明が、10点奪取でコールド発進した。大貫翔真捕手(3年)が2点を先制した3回、右越えにライナーの1発を放ち、OBの広島会沢ばりの強打で勝利に貢献した。就任2年目の紀藤監督は「勝ってかぶとの緒を締めます」と気を引き締めた。

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思いっきり、軸足の左足側に体重を残した大貫の打球は、94メートルの右翼フェンスを軽く越え、10段ほどある客席の一番上まで飛んでいった。2点を先制して迎えた3回1死二塁。中央の左腕、青木真豊(まなと)投手(3年)の内角真っすぐを強烈にたたいた。公式戦初アーチは「偉大な先輩」に近づく、インパクト十分な2ランだった。

「監督からも『お前が打て!』と言われていた。ボール球だったけど芯で捉えることができた」と照れながら言った。練習試合で放った本塁打は3本あるが、公式戦はこれが初。主将でもある大貫が打てば、チームは盛り上がる。その後も攻撃の手を緩めず、打者10人の猛攻で一挙6得点のビッグイニングとなった。

水戸啓明の前身は、水戸短大付。そこで捕手となれば、侍ジャパンのメンバーでもある広島会沢翼とオーバーラップする。「大先輩です。捕手も打撃もすごい。キャンプ中のユーチューブを見て、キャッチングを参考にしています」。

大貫のあこがれの会沢といい、就任2年目の紀藤監督といい、チームは何かと広島と縁がある。指揮官は、マスク越しによく通る声でベンチから指示を出した。「コロナの影響で全員が久しぶりに顔を合わせたときは、入部したての1年に課すのと同じ練習から始めた」と言う。さらに「今日は上出来。勝ってかぶとの緒を締める。対戦した中央さんの分まで戦いたい」。「緒」だけでなく、「気」をも締めて初戦を総括した。【玉置肇】

◆紀藤真琴(きとう・まこと)1965年(昭40)5月12日、愛知県生まれ。中京(現中京大中京)では83年夏に甲子園出場。同年ドラフト3位で広島入団。94年に最高勝率を獲得。01年から中日、05年は楽天でプレー。引退後は楽天、台湾興農、台湾統一でコーチ。18年11月に水戸啓明の監督に就任した。