昨秋青森県4強の八戸工大一が大湊に逆転勝ちで2年ぶりの8強に進出した。2-2の4回表1死満塁から3番手登板の188センチ右腕・黒田将矢(2年)が連続三振でこのピンチを断ち、自己最速更新の142キロも計測。5回2/3を1安打1失点で好救援、打っては6回に決勝打を放ち、投打で勝利に導いた。次戦23日の準々決勝は、夏3連覇を狙う八戸学院光星との「八戸ダービー」。成長著しい2年生右腕が一矢報いる。

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ロッテ種市らを輩出した八戸工大一の「剛腕列伝」にまた1人、2年生の長身右腕が名乗りを上げた。黒田は同点に追いつかれた4回1死満塁の大ピンチで緊急救援。勝負球になった120キロ台前半のカーブには切れがあり、「チームに勢いをもたらす投球がしたかった。直球が走っていて、カーブの精度も良かった」と2球種だけで、2者連続三振と完璧に抑えた。

回を追うごとに気迫が増した。6回、打者2人目への3球目だ。「おりゃー」と叫びながら投じた1球は、自己最速を4キロ更新する142キロ。「先輩のために勝ちたいっていう気持ちが、140キロ台につながった」。昨夏は県初戦で敗退。現2、3年生は悔しさを胸に、新チームを始動させた。黒田も学校から下宿までの帰り道約6キロはランニングで帰り、下半身を鍛えたことで「投球も安定するようになりました」と成長を実感する。

打っては2-2の6回1死一、三塁、外角直球を逆らわずに捉え、右翼手のグラブをはじく2点適時二塁打で勝ち越した。続く小林賢世外野手(3年)の右前適時打でダメ押し生還。ホーム上で右手拳を突き上げ、喜びを爆発させた。「自分は気持ちを前面に出していくタイプ。3年生と1日でも長く野球がやりたいです」と先輩思いの2年生が、投打で大仕事だった。

23日の大一番を前に長谷川菊雄監督(42)は「(八戸学院光星の)仲井(宗基)大監督(50)にくっついて行きたいですね。春先からボコボコに敗れているので、全員で向かっていきます」。今年の練習試合はコロナ禍で近隣校との対戦が多く、八戸学院光星には6試合とも完敗した。10年ぶりの夏頂点へ、チーム一丸となって最強の関門を突破する。【佐藤究】